【6月6日 AFP】インド西部ムンバイ(旧ボンベイ)で1959年、安アパートに住む7人の女性が共同組合「リジャット・パパド(Lijjat Papad)」を設立した。元手80ルピー(約120円)で始まった事業は、現在、数百万ドル規模にまで成長した。だが、成功物語を成し遂げたのは、野心にあふれるフェミニズムを唱える女性たちではなかった。

 リジャットは、インド全土で4万5000人の女性を雇用している。女性たちは事業の「共同所有者」で、終身雇用制が取られている。

 パパドはインドの薄焼きスナックで、地域によってはパパダムなどの名で呼ばれている。リジャットのおかげでパパドは、男性優位社会のインドにおいて、優れたビジネスや女性のエンパワーメントに結びつけられるようになった。

 82か所あるリジャットの作業所の朝は早い。女性たちは夜明け前から列をなし、完成品を届けると、新しいレンズ豆の生地を受け取り家に戻る。

 女性たちは自宅で、クミンシードと黒コショウが練り込まれた生地を器用に薄く伸ばし、丸い形に整えて乾燥させる。

 技術はいるが、正規の教育を必要としないこの仕事は、インドの多くの女性に経済的自立の機会を提供した。

 国際労働機関(ILO)によると、インドにおける女性の就業率は2019年までの20年間で34%から20%に下がった。これまで一度も女性の就業率が高かったことがないインドで、リジャットの取り組みは大きな意味を持つ。

 24歳で結婚したダルシャナ・プンダリク・パラブ(Darshana Pundalik Parab)さんは、学校を中退している自分が職を得るのは難しく、夫のわずかな給料で家計をやりくりすることに不安を感じていた。

 リジャットはパラブさんだけではなく、パラブさんのような数千人の主婦に、無条件で、家でできる仕事を提供している。

 パラブさんは35年間リジャットで働いて、3人の男の子を育て上げた。

「息子たちは、女性だけがやると決まっている仕事なんて存在しないと知っている」とパラブさんは話す。27歳になった三男は、いまだにパパド作りを手伝ってくれるという。