【5月9日 東方新報】中国の古代王朝が誕生した地・河南省(Henan)の省都・鄭州市(Zhengzhou)で5年にわたり建設工事が行われた鄭州博物館の新館が1日正式オープンした。総面積14万7000平方メートル、高さ62メートルという巨大施設で、単独の博物館としては中国最大となる。開発が遅れて国内で蔑視されることもある河南省が、誇り高き「中華文明発祥の歴地」であることをアピールしている。

 新館は円形の建物に長方形の屋根を載せた外観で、歴代の皇帝が着用した冕冠(べんかん=冠の上に長方形の木板を載せたもの)をイメージしている。新館1階には長さ70メートル、高さ8メートルの巨大レリーフがあり、古代中国を統治したという五帝の最初の帝・黄帝、夏王朝を創始し黄河の治水を成功させたという禹、夏を滅ぼして成立した商王朝の開祖・商湯(Shangtang)など、神話・伝説の世界を含めた歴史上の人物の彫像が並ぶ。

 1階から4階まで青銅、磁器、絵画、書画など21の展示ホールが設けられ、獣の紋様を施した殷王朝時代の獣面紋銅方鼎、春秋時代の編鐘(青銅器の打楽器)、唐王朝時代の石像などの貴重な歴史遺産が収蔵されている。最新の5G技術を駆使し、旧石器時代から現代までの鄭州の歴史をパノラマで紹介している。

 新館は青少年活動センター、小劇場、4D映画館、ブックカフェなどを併設しているのも特徴だ。郭春媛(Guo Chunyuan)副館長は「幅広い世代のニーズに対応し、丸1日でも滞在できる博物館を目指している」と語る。

 中華文明発祥の地である河南省は「中原の地」といわれ、後漢や三国時代の魏、隋の首都だった洛陽(Luoyang)、北宋の首都だった開封(Kaifeng)といった古都があり、カンフーで有名な少林寺(Shaolin Temple)もある。中国の歴史が好きな日本人にはなじみのある地名も多い。ただ、中国の省でもトップクラスの9000万人以上の人口を擁するが、同じく人口の多い沿岸部の広東省(Guangdong)や山東省(Shandong)が経済発展を遂げているのと対照的に、内陸部の河南省は開発が遅れている。多くの労働者が全国各地に出稼ぎをしており、いつしか中国では「河南省の人間は犯罪者が多い」というような偏見がもたれるようになった。海外情勢に詳しいリベラルな知識人でも、河南省の話題になると「詐欺師や泥棒の街ですね」と平然と話すこともある。2019年には浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)のホテルがインターネットで求人に応募した若い女性を河南省出身というだけで採用を拒否し、女性が損害賠償を求めてホテルを提訴した。

 鄭州博物館新館は「中華の中心、華夏(中国の古称)の冠」をコンセプトとしており、オープンした1日からは黄河文明の歴史をたどる「黄河名宝展」を開催している。新館を訪れる観光客らに河南省が現代中国のルーツであることを呼び起こす役目も期待されている。(c)東方新報/AFPBB News