【5月7日 AFP】カナダ人のゲイリー・ダイク(Gary Dyck)さんと妻のアンドレア(Andrea Dyck)さんは、中国の新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)に住んでいた10年の間に、同国政府がイスラム系少数民族ウイグル人への弾圧を「非常に整然と」進めていくのを目の当たりにした。カナダ下院は今年2月、中国がウイグル人に対してジェノサイド(大量虐殺)を行っていると認定する決議案を採択し、他国の議会にもそれに続く動きが起きている。

「こうした流れを見ていて、良くないことが起きると思った」とアンドレアさんはAFPに語った。「規制がどんどん増え、毎週のように新たな規則、新たな動きが生まれた」

 現在はカナダ南部マニトバ(Manitoba)州に住む夫婦は、2007年にウイグル自治区に拠点を移し、農業廃棄物を堆肥にする事業に取り組んでいた。2人は、ウイグル語と標準中国語が堪能だ。

「ウイグルでの暮らし、地元の人々との触れ合いはとても楽しかった。私たちを受け入れてくれ、コミュニティーや文化面でも歓迎された。とても特別な時間だった。そうした時間が終わりを迎えるまでは」とアンドレアさんは振り返る。

 2009年にウイグルで暴動が発生した後、「それまでの居住区は解体され始め、ウイグル人はアパートに次々と移送されていった」とアンドレアさんは言う。

 ウイグル文化の狙い撃ちは、ゲイリーさんの言葉を借りれば「非常に整然と」進められた。イスラム教の伝統を制限することから始まり、その後、食事や衣服、言語に関する規制へと広がっていった。また、イスラム教の聖典コーランの一部の版が禁止され、最終的にはウイグル語で書かれている書籍もすべて禁止されるようになったと夫婦は話す。

「みんなが知っている大きな市場では、ウイグル語での会話禁止という看板が掲げられているのを見た」とアンドレアさん。「ありとあらゆることが当局に指図されるようになったと言ってもいい。たとえ許可されたとしても、そのやり方が限定された」

 取り締まりが強化された2016年には、警察官をより多くみるようになったと夫婦は言う。主要な交差点には検問所が、そして至る所に監視カメラが設置されるようになった。

「食料品店に入るにも、いきなり空港並みの保安検査を受けなければならなくなった」とアンドレアさんは話す。