【4月29日 AFP】宇宙飛行を経験する幸運に恵まれても、喜んでばかりいられない。筋力低下、放射線被ばく、閉塞(へいそく)状態が及ぼす心理的影響などの代償が待っている。

 欧州宇宙機関(ESA)の航空宇宙医師、アドリアノス・ゴレミス(Adrianos Golemis)氏は、米宇宙開発企業スペースX(SpaceX)宇宙船「クルードラゴン(Crew Dragon)」運用2号機のミッションに参加しているトマ・ペスケ(Thomas Pesquet)飛行士の健康を管理している。このたび、宇宙医学に関する知見を提供してくれた。

Q:宇宙で健康を保つ上で最も大変なことは?

A:国際宇宙ステーション(ISS)がある地球低軌道について言えば、重力がほぼゼロなので骨や筋肉に悪影響がある。

 放射線も大きな問題だ。地上では、磁気圏や大気で守られているが、その外側に出れば、こうした保護がなくなる。

 最近分かってきたことで念頭に置いておくべき問題もある。健康な宇宙飛行士でも発症することがある眼疾患や静脈血栓などだ。

Q:最新の科学的な知見では、人体に対する放射線の許容量は?

A:ISSでの6か月間のミッションに2〜3度参加しても、おそらく健康に重大な影響を及ぼす恐れはないだろう。

 私たちが目指しているのは、がんの発症リスクが、宇宙飛行の経験が全くない人と比較して3%を超えないようにすることだ。

Q:無重力状態が与える影響として他にはどんなことが?

A:私たちは(地球の重力加速度として)1Gの環境に適応している。

 無重力になっても、脚の静脈は1G環境下と同じように血液を頭に送り込もうとするため、より多くの血液が上半身に集まる。ミッションの最初の頃は、飛行士の顔がすごくむくんでいるのを目にすることがあると思う。

 循環器系はやがて適応し、より少ない血液量に体が慣れてくる。ISSからの帰還を控えた飛行士には、水分や塩分をたくさん摂取するよう指示している。