■イスラム過激派が教師を殺害し、学校を破壊

 昨年12月から約730人の生徒・学生が拉致され、500万人以上の勉学に支障が出ていると国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)は指摘している。「緊急に対応策を取らないと、教育制度がいずれ崩壊する」

 ナイジェリア北東部の識字率や就学率は極めて低いが、10年以上続くイスラム過激派勢力による反政府活動によって、教育の機会はさらに奪われている。

 ユニセフの2018年の報告書によると、イスラム過激派は北東部で、少なくとも2295人の教師を殺害、1400以上の学校を破壊した。そのうちほとんどの学校は「被害があまりに大きいか、危険な状況が続いている」ため、再開に至っていない。AFPの集計によると、学校への襲撃で殺害された生徒・学生は120人以上に上っている。

 イスラム過激派組織「ボコ・ハラム(Boko Haram)」は、2014年ボルノ(Borno)州チボク(Chibok)で200人以上の女子生徒を拉致した。その敵対勢力の「イスラム国西アフリカ州(ISWAP)」も、近隣のヨベ(Yobe)州ダプチ(Dapchi)で100人以上の女子生徒を誘拐している。

 この後、就学率は急激に低下した。

 ナイジェリアは2014年5月、経済界の組織「教育のための世界経済界連合(Global Business Coalition for Education)」の支援を受け、2000万ドル(約22億円)の取り組み「安全な学校イニシアチブ(Safe Schools Initiative)」を開始したが、すぐに行き詰まった。

 ナイジェリアで就学していない1040万人の子どものうち6割は北部にいるとユニセフは推定する。北部の教育は、より豊かな南部の水準に後れを取っているが、学校襲撃でさらに悪化する恐れがある。

「閉鎖中の学校数や、家にいる子どもの膨大な数を考慮すると、私たちはすでに大変な窮地に立たされている」と、北部最大都市カノ(Kano)の教師ムスタファ・アフマド(Mustapha Ahmad)氏はAFPに語った。

 2月、カノ市は襲撃を恐れて十数か所の寄宿学校を閉鎖し、生徒を帰宅させた。

 閉鎖されたのは貧困家庭の生徒が在籍する公立学校で、裕福な家庭の子どもは私立校に通うと教師のユスフ・サデック(Yusuf Sadiq)氏は指摘した。「これで貧しい家庭の子どもたちから教育がさらに取り上げられる。教育こそ、社会的地位を変えるための唯一の手段なのに」