【4月27日 東方新報】若者の失業率が10%を超えている中国。今年夏の大学卒業予定者は過去最高の909万人となる見通しで就職難が予想されるが、それなのに人手が足りない業種も多い現象が起きている。

「学生がまったく来ない。スマホでもいじっているしかない」

 湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)で開かれた合同就職フェアで、電機メーカーの担当者が空を見上げながら、ぼやいた。就活シーズン真っ盛りでも、鉄道、溶接、建設、電機など製造業を中心としたブースに訪れる学生の姿は少ない。精密機械メーカーの担当者林燕(Lin Yan)さんは「以前は年に4回、就職説明会を開けば新規採用者を確保できたが、今は月に4回説明会を開いても間に合わない。月給1万元(約16万6000円)で設計士を募集しているが、人材を確保できません」と嘆く。セメント会社のリクルーター馬さんは「うちの社員の平均年齢は今や40代。若い人材を確保できないことが、経営のネックとなっています」と困惑する。

 一方、オンラインではインターネット企業の採用活動が盛んで、学生たちの申し込みが殺到している。浙江理工大学(Zhejiang Sci-Tech University)の李さんは「eコマースのプラットフォームで働きたい。これからさらに成長する業界で自分の才能を試したい。就職浪人も覚悟しています。メーカーですか? うーん、興味ないですねえ」と話す。1990年代以降に生まれた若者は物心つく頃から豊かな生活を過ごしており、自分がやりたいことを真っすぐ優先している。

 中国の都市失業率は全体で5%程度を推移しているが、16~24歳の若年層人口だけで見ると2018年から失業率は10%を超え、昨年12月は12.2%だった。毎年増加を続ける若者人口を労働市場が吸収できない面と、学生が就職先を「えり好み」してミスマッチが起きている面がある。

 製造現場の労働者も不足している。

 江蘇省(Jiangsu)のある電子工場が月給8000元(約13万2800円)で労働者を募集し、出稼ぎ労働者の集団が現地に到着すると、近くの電子工場が月給1万元の条件でそのまま「強奪」したことが報道された。浙江省(Zhejiang)のあるメーカーは「人材は文字通り奪い合い。若者の確保は難しいし、経験10年以上の熟練労働者になると月給1万5000元(約24万9000円)でも来てくれない」とあきらめ顔だ。

 高卒などの若者の間では、食事デリバリーや宅配便、オンラインタクシー運転手などの職種が人気だ。宅配サービス業で働く人の数は2019年に1000万人を超え、そのうち食事デリバリーは700万人を超えた。昨年からの新型コロナウイルスの影響でその数はさらに増えている。デリバリー業界は過酷労働と社会保障の未整備が社会問題になっているが、それでも「工場で黙々と働くより、自分が好きな時に働き、自分の力量で稼げるデリバリーの方が向いている」という若者は多い。

 清華大学(Tsinghua University)雇用・社会保障研究センターの楊燕綏(Yang Yansui)所長は「製造業は国の生産力や技術力を象徴するものだ。インターネット産業が成長しても製造業に取って代わるものではない」と指摘。中国の製造業生産高は2020年まで11年連続で世界第1位の座を守っているが、現状では将来の発展に支障が出る恐れがあるという。

 日本でも1980年代のバブル経済時代に製造業が「3K(キツい、汚い、危険)労働」と敬遠される傾向があったが、中国も同じような局面に遭遇している。(c)東方新報/AFPBB News