【5月2日 AFP】デジタルアート作品を記録的な6930万ドル(約75億円)で落札したブロックチェーンビジネスの起業家は一見、裕福なコレクターには見えない。

 インド出身のビグネシュ・スンダレサン(Vignesh Sundaresan)氏(32)は、Tシャツにチノパンというカジュアルな装いで、シンガポールの標準的なアパートに住み、不動産や車も持たない。彼の投資先のほとんどは仮想世界だ。

「自慢の持ち物といえば、コンピューターくらい。それから時計でしょうか」。スンダレサン氏は、飾り気のない自宅のフラットでAFPに語った。彼はメタコバン(MetaKovan)の別名でも知られる。

 その控え目な振る舞いからは、非代替性トークン(NFT)と呼ばれるデジタル資産に投資する大富豪だとは想像できない。NFTとは、ブロックチェーン技術を用い、芸術作品からインターネットミームまでのさまざまなデジタルコンテンツを、所有可能な唯一無二の資産に作り替えたものだ。

 NFTの出現により、あらゆる種類のデジタルアートを収益化する新たな機会が生まれたと見る向きも多い。デジタル作品の複製は無限に可能でも、作品の最終的な所有権を主張できるのは、そのNFT所有者だ。

 スンダレサン氏が先月、史上最高価格の6930万ドルで購入したNFT作品は、米国人アーティスト、ビープル(Beeple)のデジタルコラージュ「Everydays: The First 5,000 Days(毎日 最初の5000日間)」。

 1日1作品を制作し、出来上がった5000作を一つにまとめたこのコラージュは、ビープルを存命する高額作品アーティストの第3位に押し上げた。

 スンダレサン氏は妥当な価格だったと言う。「それほど重要な作品だったと思う」

「1枚の作品としてそれ自体、素晴らしいのだが、世界に対して何かを告げよう、何かを象徴的に表そうとする意図がある…つまり、表層の下で起きている全てのことを」

 NFTの人気は緩やかに上昇していたが、ビープルの最新作の落札でメディアの脚光を浴びた。