■中国批判の過去は許されない

 一方、今年のアカデミー賞を席巻すると目されているジャオ監督は、中国で苦境に立たされている。

『ノマドランド』はすでに、ゴールデン・グローブ賞(Golden Globe Awards)映画部門の作品賞と監督賞をはじめ、数々の賞を受賞している。作品賞の受賞は女性監督として初の快挙だったこともあり、国営メディアはジャオ氏を「中国の誇り」と褒めたたえた。

 しかし、ジャオ氏が中国批判をしたと受け止められるような昔のインタビューをソーシャルメディアのユーザーが掘り起こしたことで、称賛の声はたちまち愛国主義者の反感の声に変わった。

 中国の映画当局は、今月23日から『ノマドランド』の国内上映を許可していたが、それも危ういとみられている。

 環球時報は、「クロエ・ジャオは『ノマドランド』でオスカーにノミネートされても、中国では許してもらえないだろう」と報じている。さらに「専門家」の意見として、中国の映画ファンは、同作品をボイコットするかもしれないと伝えている。(c)AFP/Peter STEBBINGS