北極圏での落雷のリスク、森林火災多発と永久凍土溶解の懸念 研究
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【4月8日 AFP】北極圏で発生する落雷が、今世紀のうちに倍増する可能性があると最新の研究が警告している。これにより、ツンドラ(凍土帯)で広範囲に火災が発生し、永久凍土に閉じ込められてきた炭素が一気に放出される危険性が高まるという。
北米とシベリア(Siberia)の永久凍土には、地球大気中に現在存在する炭素量のおおむね2倍にあたる二酸化炭素(CO2)が含まれている。さらに温暖化が進むにつれ、永久凍土の著しい溶解が懸念されている。
米国の研究チームは、北方圏および北極圏で発生した落雷に関する米航空宇宙局(NASA)の衛星データを20年以上さかのぼって分析。次に、気温上昇に伴い落雷率がどのように上昇するかをモデル化した。
この際に使用したのは、対策や慣行の現状維持を前提とするBAU(business as usual)シナリオで、今世紀中に炭素汚染の大きな減少はないものと仮定。この結果、落雷の頻度の増加率はほぼ100%となる可能性が明らかになった。
米カリフォルニア大学アーバイン校(University of California, Irvine)地球システム科学科の研究者、ヤン・チェン(Yang Chen)氏は「われわれは北米やユーラシア大陸全域について、高緯度の北方樹林や北極圏のツンドラ地帯における雷現象がどう変化するかを予測した」と語る。
「中緯度地方で予想される変化がはるかに軽微なことに比べ、(高緯度地方の)雷現象の反応の大きさに驚いた」と言う。
4月5日付の英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)に掲載された研究論文で、チェン氏のチームは気温が1度上昇するごとに落雷は約40%増加すると予測した。
この雷の変化は、北極圏全域の「火災発生様式を大きく変化させる可能性があり」、永久凍土に波及効果をもたらすとチームは指摘している。
論文の共著者ジェームズ・ランダーソン(James Randerson)氏は、米アラスカ州での森林火災の発生件数は近年、並外れて多いと語った。特に「2015年は異例の火災の年だった。記録的な火災発生数だった」と言う。「落雷に原因があるとわれわれは考えざるを得なかった」
北極圏のツンドラ地帯の火災でも、北方樹林の火災とほぼ同量の炭素が放出される。そして生態系に重要な草地やコケ類、低木が焼失する。
今回の研究は「北極圏の雷の監視体制を改善することの重要性」さらに「雷現象や火災力学、植生と土壌への影響に関するよりよい研究モデルの確立の必要性」を強調するものだとチームは述べている。(c)AFP