【7月10日 AFP】広大で寒冷なツンドラ(永久凍土)地帯で最もよく知られるロシアの広漠としたシベリア(Siberia)地方は現在、気候変動によって変容を遂げつつあり、気温の上昇、森林火災の増加、ガの幼虫の異常発生などに見舞われている。

 ロシア・ウラル(Urals)地方東部から太平洋まで数百万平方キロにわたって広がるシベリア地方は今年、異常気象によってとりわけ大きな打撃を受けている。科学者らによると、その原因は地球温暖化だ。

 5月には、地元メディアが野草の花が咲いている写真を掲載したが、通常は寒冷な地域に位置するシベリアでは、一年のこれほど早い時期に開花はめったに起きない。アイスクリームの売上高も30%上昇した。

 ロシア水文気象環境監視局(Rosgidromet)の主席気象学者、マリーナ・マカロワ(Marina Makarova)氏は、「シベリアのこの冬の気温は、130年間の観測史上で最も高かった」と指摘。「平均気温は、冬季の平均値を最大6度上回った」と述べている。

 気温の上昇は、野花の開花やアイスクリームの売り上げ増をもたらしただけではない。シベリア東部で降雨量が3分の1増加したことで、特にトゥルン(Tulun)周辺地域では洪水で壊滅的な被害が生じ、数千人が避難を余儀なくされた。

 さらにシベリアでは、気温上昇に伴い、この地方に生息するカイコガの一種の幼虫が急増している。針葉樹の葉を食べ尽くすこのガは通常、冬季には活動せず、春と夏、秋の間に採餌するが、現在はこの期間が長期化する傾向にある。

 ガの専門家のウラジーミル・ソルダトフ(Vladimir Soldatov)氏は、「長年経験した中で、これほど巨大で成長が速いガは見たことがない」と指摘し、森林に「悲惨な影響」をもたらすと警鐘を鳴らす。

 幼虫が食害を起こす森林の範囲はますます拡大しており、それだけの範囲の針葉樹の葉が食い尽くされ、森林火災が発生しやすくなる。

 ソルダトフ氏はAFPの取材に、このガが「通常の生息地よりも150キロ北方に移動しているが、それは地球温暖化のせいだ」と語った。