■ボイコットは10年遅い

 しかしドイツのヨシュア・キミッヒ(Joshua Kimmich)は「ボイコットをするには10年遅すぎる。当時の時点で考えておくべきだった」と発言。ベルギーのロベルト・マルティネス(Roberto Martinez)監督も、「(ボイコットは)解決策にはならない。それでは問題に背を向けているだけでしかない」と信じている。

 カタールでは、W杯の準備に多くが携わる移民労働者の待遇が大きな批判を集めており、人権団体は雇用主による搾取や危険な労働条件を非難している。

 これに対してカタール当局は、どの湾岸諸国よりも労働環境の改善に力を入れてきたと強調し、「労働者の健康と安全については常に透明にしてきた」と話している。大会組織委員会も、宿泊施設の質が改善したこと、労働者から不当に徴収したあっせん手数料3000万ドル(約33億円)以上の返還を約束したことなどを取り上げ、中東初のW杯はすでに「労働者に大きな利益」をもたらしていると主張している。

 抗議する側も内部に矛盾を抱えており、ドイツ代表にはカタール航空(Qatar Airways)をスポンサーに持ち、カタールで定期的に合宿を行っている独ブンデスリーガ1部のバイエルン・ミュンヘン(Bayern Munich)の所属選手が多い。また、カタールがオーナーを務める仏リーグ1のパリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)の選手が代表チームで抗議に参加する違和感も否めない。

 抗議が続くことで、特に微妙な立場に追い込まれるのが国際サッカー連盟(FIFA)だろう。それでもFIFAは、今のところ抗議を止めようとはせず、「表現の自由や、善意の力としてのサッカーのパワーを信じている。この件に関する懲罰手続きを始める予定はない」と話している。

 一方で、人権活動家は代表選手の姿勢をたたえている。労働者権利団体フェアスクエア(Fair Square)のニコラス・マギーハン(Nicholas McGeehan)調査員は、「各チームがこうしたスタンスを示したのは大いに称賛すべきであり、彼らは敬意をもって前向きなやり方で行っている」と話した。

「サッカーというスポーツ、そして代表選手が取り上げた問題を心から気にかける人間であれば、今回の出来事を非常に前向きに捉えるはずだ」 (c)AFP