【3月25日 東方新報】中国では今年の春節(旧正月、Lunar New Year)連休(2月11~17日)で映画興行収入が78億元(約1304億円)を超え、春節期間の最高収入を更新した。市民の映画熱が高まる一方、後を絶たないのが映画館での盗撮だ。政府機関や映画業界は盗撮撲滅を呼びかけている。

 映画館での盗撮は以前から横行していたが、バッグや衣服の中にビデオカメラを隠し持って撮影するといった「悪だくみのテクニック」が必要だった。近年はスマートフォンの普及で容易に撮影ができるように。自分が映画館に訪れた「記録」として作品を鑑賞しながら撮影したり、中国版LINE「微信(ウィーチャット、WeChat)」のグループチャットに「見てきたよ~」と写真や動画を投稿したりする行為が増えている。「自分のための撮影や、友人の間で共有するだけなら問題ない」と考える人も少なくないのが実情だ。

 しかし、どんな理由をつけても、撮影行為自体が知的財産権の侵害に当たるのは当然。また、中国版ツイッター「微博(ウェイボー、Weibo)」に投稿する人も多く、内容が拡散してネタバレにもつながっている。公安省や政府の映画関係部門は春節前から「文明的な観賞と海賊版の拒絶」と繰り返し呼びかけ、インターネットのキーワードランキングの上位にもなった。東京を舞台にしたコメディーで、春節期間中に最もヒットした映画『唐人街探案3(邦題:僕はチャイナタウンの名探偵3)』のスタッフは「SNSの盗撮投稿を見ないで」と訴えた。こうした取り組みから、春節以降は微博の投稿やウィーチャットなどでの盗撮映像は大幅に減少した。

 より悪質な問題は「プロの盗撮」だ。上映初日に撮影し、海賊版をすぐに販売する犯罪グループが横行している。例えば、『僕はチャイナタウンの名探偵3』の次にヒットした作品『你好、李煥英(英題:Hi, Mom)』の海賊版が5元(約83円)でインターネット上を通じて販売されていた。中国は劇場や上映時間などで料金は異なるが、日本円で1000~1500円程度が多い。ネット上では「春節の大作映画6本まとめて8.88元(約148円)」という宣伝もあった。ネット上の無数の違法行為を発見して摘発するにも限界があり、映画関係者は「市民が著作権保護の意識を高め、海賊版を利用しないことが重要」と訴えている。(c)東方新報/AFPBB News