【11月13日 東方新報】新型コロナウイルス感染症まん延で大きな影響受けた世界の映画市場だが10月27日、中国映画産業はコロナ禍から再始動100日目にして、世界に先がけて業績を回復、チケット売り上げは北米を超えて世界一位となった。

 特に中国映画『八佰(英題:The Eight Hundred)』の空前のロングラン・ヒットは、中国映画市場の回復を示す重要なシグナルとなった。第二次上海事変の実話を映画化したこの超大作を制作した華誼兄弟(Huayi Brothers Media)の売り上げは今年第3四半期7億元(約111億円)を超え、前年同期比45.02%増。『八佰』のチケット売り上げは31億元(約493億円)を突破しており、今年の中国映画売り上げのトップとなっている。

 映画告知宣伝プラットフォーム「灯塔」のリアルタイムデータによれば10月15日の段階で、2020年中国映画市場のチケット売り上げは、累計129.5億元(約2058億円)で、北米地域映画市場の19.25億ドル(約2026億円)を初めて超えて、世界首位の映画市場となった。しかも中国映画市場の売り上げの85%を国産映画が占めた。

 今年の中国映画は豊作で、10月の国慶節(建国記念日)連休に合わせた『我和我的家郷(英題:My People My Homeland)』、『姜子牙(英題:Legend of Deification)』がそれぞれ23億元(約366億円)、14.85億元(約236億円)を売り上げた。2020年に1億元(約16億円)以上のチケット売り上げがあった中国映画は11本、うち3本が10億元(約159億円)以上を売り上げたかっこうだ。特に注目すべきは、国慶節連休期間の映画館は入館者数を定員の75%以下に制限したにもかかわらず、39億元(約619億円)以上の売り上げを記録したということだ。国慶節休みだけで、実にのべ1億人が映画を見たことになる。これは中国国慶節映画市場、2番目の好成績だという。

 今年、中国映画市場が北米を超えるのは実のところ、想定内のことだった。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)という特殊な事情の中、映画館は感染ハイリスク地域として、その営業は実質困難に陥っていた。中国は感染に対するコントロールが比較的妥当で、映画館の再開も早々に行われ、人々の生活もすでに正常に回復しているが、北米はまだパンデミックの渦中、むしろ冬に向けて第3波が予測されている。

 また北米の映画、特にハリウッド(Hollywood)の大作はもともと、中国映画市場をターゲットにしたものが多かったが、最近の中国はソフトパワーの国産化に力を入れており、中国映画の質も急激にレベルアップしている。こうしたことから中国映画市場で上映される映画のほとんどが国産映画に変わっていった。新型コロナウイルスのせいで、ハリウッドの話題作の制作や公開が延期されたりもした。

 ただ、今後世界がパンデミックから脱し正常に回復したあと、中国映画産業がこの優勢を保(たも)てるかどうかは、まだまだ課題がある。中国の映画制作の技術水準はやはりハリウッドなどと比べると力量差はまだあり、パンデミックの特殊事情によって北米市場を超えたぐらいで喜んでいるわけにはいかない。2020年、中国の映画館に出掛けた述べ人数は推計4億人でとどまり、2024年には14億人に回復するとみられているが、北米市場が回復すれば、やはり中国は依然として世界第二位の市場にとどまっているという予測もある。これは中国の一人当たりの映画チケット代が米国の半分と安価であることが大きな原因だ。

 2020年全体としては、新型コロナウイルスの影響をうけて、中国映画市場チケット売り上げは2019年の120億ドル(約1兆2000億円)から30億ドル(約3150億円)前後に激減するとみられる。

 一方、中国は2020年の新型コロナウイルスに加えて5Gの普及により、インターネットのストリーミング配信(OTT)やビデオ・オンデマンド(VOD)による映画の売り上げが急激に伸びている。2020年のOTT収入は102億ドル(約1兆738億円)、2024年には161億ドル(約1兆6948億円)規模になると予測されている。またVODによる映画売り上げは2020年に約100億ドル(約1兆527億円)に達する見込みで初めて、映画館チケット収入を超えた。2024年のVOD収入は160億ドル(約1兆6843億円)に上るとの推計があり、これは映画館チケット収入の倍に当たると見込まれる。

 映画産業はまさに消費者と企業にニーズに適応して、再編成が進んでいるところで、コロナ終息後、厳しい挑戦に直面するとも予想されるが、デジタル化への移行による市場の細分化によって、新たなビジネスチャンスも期待できそうだ。(c)東方新報/AFPBB News