【3月10日 AFP】東日本大震災による福島第1原子力発電所の事故から10年を前に国連(UN)の科学委員会は9日、この事故による住民の健康被害はないとする報告書を発表した。

「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」のギリアン・ハース(Gillian Hirth)議長は、「福島の住民の間で、同事故による放射線被ばくに直接起因すると考えられる健康被害は報告されていない」と述べた。前回2013年に実施した調査の結果を強化する報告となった。

 周辺地域で甲状腺がんと診断された子どもの割合が特に高いことについては、UNSCEARでは広範な検査の結果とみているという。

 国際原子力機関(IAEA)も福島第1原発事故が住民の健康に何らかの悪影響を与えた証拠はないと述べている。IAEAのラファエル・グロッシ(Rafael Grossi)事務局長は声明で「環境中に放出された核種によるその後の影響を通じ、科学者らはこれが健康被害を引き起こした証拠は発見していない」と述べた。

 ただし「規制当局は強力で独立し、また十分かつ的確なリソースを備えていなければならないというのが、福島の重要な教訓だ」ともグロッシ氏は述べた。(c)AFP