【3月9日 東方新報】中国では現在、成人の独身者が日本の総人口の2倍に近い2億4000万人に上る。近年は婚姻率が低下する一方で離婚率が上昇。中国メディアは「将来、わが国の独身人口は4億人に達する」と予想している。

 中国では結婚適齢期の男性が女性より3000万人以上多く、「男余り」が深刻になっている。国家統計局の統計によると、2019年で女性100人に対する男性の数は25~29歳が106.6人、20~24歳が114.6人、15~19歳が118.3人と、年齢が下がるにつれて男性の割合がどんどん高くなっている。近年まで続いていた「一人っ子政策」の影響で、「一人だけ産むなら家を継ぐ男の子」という保守的価値観を持つ家庭や、「働き手として男がほしい」と考える農家などが、胎児が女の子と分かると中絶した結果、男性の比率が高まったといわれる。

「男余り」の影響を直撃しているのが、農村地帯の若者だ。ただでさえ地元に男性が多い上、ある程度の「選択権」がある女性の方はできるだけ都市部で出会いを求める。結婚時に男性側が用意する「マイホーム、車、結納金」の三大件(三種の神器)も重荷となっている。日本では結婚してからしばらくは賃貸に住み、人生設計が定まってからマイホームを探すことが一般的。しかし中国では結婚と同時にマンションや一軒家を男性側が購入することが多く、自動車も必須アイテムに。結納金は大都市で10万元(約167万円)、地方都市では6万元(100万円)ほどが相場とされるが、都市部に条件面で劣る農村部はむしろ高額の結納金が必要となる。

 一方の都市部でも「結婚しない」「結婚できない」若者が増えている。男女ともに高学歴化が進み、結婚にこだわらず一人暮らしを謳歌(おうか)する裕福な独身もいれば、「996(午前9時から午後9時までの勤務が月曜から土曜まで6日間)」に代表される過酷な労働体制に疲弊する若者も多い。高騰を続ける不動産価格や過酷な受験競争の現状から「家族で暮らせる家を買い、子どもの教育に大金を投じる自信がない」と、結婚に二の足を踏む心理も広がっている。

 こうした背景と少子化が絡み合い、中国の婚姻登記件数は2013年の1346万件から減少を続け、2019年は947万件と初めて1000万件の大台を割った。逆に離婚件数は2019年に410万件を数え、同じ年の婚姻件数の半数近くに迫っている。社会主義国家の中国では男女共働きが常識で、女性に経済力があるため以前から離婚件数は比較的多い。離婚する年齢層を見ると若者だけでなく、子育てを終えた熟年世代も目立つ。

 中国の近年の経済成長は、税収を多くもたらす労働人口が多く、社会保障が必要な高齢者が少ない「人口ボーナス」の影響が大きかった。今後、労働人口のほとんどが一人っ子世代となると世界史上でもまれな「超高齢化社会」が到来し、経済成長の鈍化、社会保障の負担増といった問題に直面する。独身層の増加はこの問題に拍車をかけるだけに、政府としても対応が迫られることになる。(c)東方新報/AFPBB News