【3月6日 Xinhua News】中国の蘭州大学環境考古学チームの張東菊(Zhang Dongju)教授らは、甘粛省甘南チベット族自治州夏河県にある白石崖(はくせきがい)鍾乳洞における人類の活動史について、科学技術を活用してひもとこうと試みている。より完全で信頼性の高い年代の枠組みを構築し、ネアンデルタール人と近縁関係にある旧人「デニソワ人」の石器製造技術や動植物資源の利用方法、生存環境、環境適応方法などの解明を目指す。

 中国科学院の陳発虎(Chen Fahu)院士(アカデミー会員)は2018年から、蘭州大学環境考古学チームを率いて白石崖鍾乳洞で考古学調査を行っている。

 同鍾乳洞は標高3280メートルの青海チベット高原北東部にある。19年、陳氏のチームによる研究の結果、ここから出土したヒトの下顎(かがく)骨の化石が少なくとも16万年前のデニソワ人のものであることが分かった。研究成果は学術誌「ネイチャー」に掲載された。

 デニソワ人は2010年に確認された新しい古代人類で、陳氏のチームが発見したデニソワ人の化石は、シベリアのデニソワ洞窟以外で初めて発見されたもので、白石崖鍾乳洞は青海チベット高原で最も早い旧石器時代の考古学遺跡となった。研究結果は、青海チベット高原における先史時代の人類の活動史を従来の4万年前から16万年前までさかのぼらせただけでなく、デニソワ人の地理的分布もシベリアか同高原まで初めて拡大し、東アジアにおけるデニソワ人の分布について化石証拠を提供することになった。

 これらの重要成果はさまざまな科学技術や手法の活用と切り離せない。ここ数年、化学や物理学、生物学、遺伝学などの技術・手法を含む科学技術の活用により、古代の遺物に対し全方向からの鑑定や試験、分析、検討が行われ、従来の考古学では解決できなかった多くの問題が明らかになった。

 蘭州大学環境考古学チームは昨年、中国科学院古脊椎動物・古人類研究所らと共同で白石崖鍾乳洞の10万年前と6万年前の堆積物からデニソワ人のミトコンドリアDNAを抽出した。デニソワ人のDNAがデニソワ洞窟以外で抽出されたのは初めてとなった。

 張氏は「科学技術の考古学への導入により、過去と未来が効果的に結び付き、よりリアルで生き生きとした歴史を復元させることができ、人類がより良い未来に向かうための参考と教訓を提供している」と語った。(c)Xinhua News/AFPBB News