【2月26日 AFP】陸上女子800メートルで五輪2連覇中のキャスター・セメンヤ(Caster Semenya、南アフリカ)が、女子アスリートのテストステロン(testosterone)値を制限する規定の撤回を求めている問題で欧州人権裁判所(ECHR)に提訴したと、担当弁護士が25日に明らかにした。審理の具体的な日程は決まっていない。

 ワールドアスレティックス(World Athletics、世界陸連)は2018年、セメンヤら「体の性のさまざまな発達状態(性分化疾患、DSD)」という遺伝的変異がある選手は、体内のホルモン値を抑える薬を摂取しない限り400メートルから1マイル(約1600メートル)の種目には出場できないという規定を定めた。

 現在30歳のセメンヤは、この問題に関してスポーツ仲裁裁判所(CAS)とスイス最高裁に異議を申し立てたが、いずれも敗訴していた。担当弁護士によれば、同選手はスイスが「欧州人権条約(European Convention on Human Rights)の下で権利が侵害されている自分のことを守る積極的義務を果たしていない」と、ECHRが判断することを求めているという。

 スイス最高裁は昨年、CASの裁定を「疑うことはできない」と結論付けていた。しかし、セメンヤは今回の訴訟で、ECHRが「ワールドアスレティックスによる、女性アスリートへの長きにわたる人権侵害を終わらせる」ことを望んでいる。

 発表文では、「私たちは強く勇敢な女性アスリートであり、これまでも常にそうだった。私たちの望みは、これを最後に自由に走れるようになること」とのコメントが引用された。

 その一方で、セメンヤはこれまでのところ、東京五輪の出場資格を獲得していない。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)で大会が2021年に延期されることが決まる前には、200メートルで出場を目指す決意を示していた。(c)AFP