【2月26日 AFP】現在のメキシコ沖に約6600万年前に巨大な天体が衝突して起きた「衝突の冬(Impact winter)」では、恐竜を含む地球上の生物の約4分の3が消滅した──。

「チチュルブ(Chicxulub)衝突体」と呼ばれるこの天体について、米ハーバード大学(Harvard University)の2人の天文学者チームがこのほど、その起源と性質をめぐる長年の謎を解明したと発表した。

 研究では、チチュルブ衝突体が太陽系外縁部の氷の破片群がある領域を起源とする彗星(すいせい)で、木星の作用によって地球に衝突したことが示唆された。また、同様の衝突は2億5000万~7億5000万年に1回の確率で発生する可能性があるとされた。

 従来の説では、チチュルブ衝突体は火星と木星の間にある小惑星帯から飛来した小惑星の破片とされていたが、15日の英オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に掲載された論文は、これに異を唱えている。

 論文の筆頭執筆者であるアミール・シラジ(Amir Siraj)氏は、「太陽系最大の質量を持つ木星は非常に重要」とAFPの取材で語った。「太陽系外縁部からやって来る長周期彗星に影響を与え、太陽に接近するような軌道に乗せる」と述べ、木星が「ピンボールマシン」のような働きをすると説明した。長周期彗星は公転周期が200年以上だ。

 太陽系外縁部の極低温領域から来る長周期彗星には、小惑星に比べてより多くの氷が存在している。それが融解してガスと塵(ちり)の見事な尾を引くことは広く知られている。

 シラジ氏によると、太陽をかすめるように通過する彗星は「サングレーザー(Sungrazer)」と呼ばれ、最も近づくときには、太陽に面している側に非常に大きな潮汐(ちょうせき)力を受ける。これは太陽熱が彗星に及ぼす蒸発作用とは比較にならないほど大きいという。

「大きな潮汐力を受けるサングレーザーは、最も大きなものだと1000個ほどの破片に砕けると考えられる。この破片一個一個がチチュルブ衝突体ほどの大きさ、もしくは地球上で恐竜絶滅を引き起こすほどの大きさとなる」

 シラジ氏と論文共著者のアビ・ローブ(Avi Loeb)教授は今回の研究で、長周期彗星が地球に衝突する確率が、チチュルブや他の既知の天体衝突の発生時期と符合する統計モデルを構築した。

 従来説の通りに衝突したのが小惑星だとすると、実際の観測データと予想される発生確率の間には10倍近くの差が生じるとローブ教授はAFPに説明した。