【2月17日 AFP】米ニューヨーク州のアンドルー・クオモ(Andrew Cuomo)知事は昨春、同州を襲った新型コロナウイルスの危機対応において、矛盾した発言を繰り返したドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領とは対照的な、率直な語り口と共感的な態度が国中から称賛された。

 だが、それから1年近くが過ぎ、トランプ氏が大統領の職を退任した今、3期目の任期を務めるクオモ氏の人気にも陰りが出てきたようだ。ニューヨーク州の介護施設での新型ウイルスによる死者数をめぐる問題について、クオモ氏がどこまで把握していたのかということに疑惑の目が向けられている。

 同州の介護施設での新型ウイルスによる死者数は、これまで8500人あまりとされていた。だが、州司法長官は先月、州政府が死者数を数千人単位で過少報告していると指摘する報告書を公表した。これを受け、州は介護施設での死者数を1万5000人以上へと修正した。

 クオモ氏の側近は先週、民主党議員らとの電話会議で、州政府はトランプ政権下の司法省による調査を恐れ、死者数を抑えたと認めた。

 クオモ氏は15日、州政府の情報開示に遅れがあったと初めて認め、遅延が「懐疑と不信感と陰謀論を助長し、混乱を深めた」と述べた。だが、謝罪はせず、隠ぺい疑惑は否定した。

 民主党が実権を握るニューヨーク州議会は、感染が拡大していた昨年3月にクオモ氏に付与された、特別権限を見直すと警告している。

 シエナ大学研究所(Siena College Research Institute)が16日に発表した調査によると、クオモ氏の対応を評価するとしたニューヨークの住民は51%と、先月の56%から低下した。

 ニューヨーク州立大学バッファロー校(University at Buffalo, The State University of New York)のジェイコブ・ナイハイゼル(Jacob Neiheisel)准教授は、クオモ氏の「人気はかなり落ちた」とし、広く称賛されてきた同氏の新型ウイルス対応に対する「再評価」がされていると指摘した。

 トランプ氏は新型ウイルス対応で、政府の対策チームの専門家と相反する発言を繰り返し、混乱を招いた。一方、クオモ氏の定例会見は信頼感と安心感を与えるもので、各局のニュースで定番となり、多くの人が視聴した。

 サラ・ローレンス・カレッジ(Sarah Lawrence College)のサム・エイブラムス(Sam Abrams)教授(政治学)は、ニューヨークの政治家として40年のキャリアを持ち、元州知事の故マリオ・クオモ(Mario Cuomo)氏を父に持つクオモ現知事は「威張っており、尊大」だと考えられていたが、トランプ氏に比べると「優れた政治家で、思慮深く力強い指導者だった」と述べた。

 一部の研究者は、現在のクオモ氏の人気下落は、トランプ氏の退任と関係していると指摘している。(c)AFP/Peter HUTCHISON