【2月19日 東方新報】国をまたぐ人やモノの往来が活発になるにつれ、頭を悩ませるのが生態系を破壊する外来生物の侵入だ。世界第2位の経済大国となった中国でも年々、有害な外来種が増えており、水際対策や国内での拡散防止に労力をそそいでいる。

 中国の税関総署によると、2020年に全国の税関が検疫で見つけた有害生物は384種。発見総数は6万9500回で、1日平均約190回に上る。上海市とチベット自治区(Tibet Autonomous Region)ラサ市(Lasha)の税関では、農作物や植物を食い荒らす蝗害(こうがい)を起こすアフリカ原産のサバクトビバッタの侵入を食い止めた。この他にも、緑豆から害虫のササゲゾウムシ、輸入木材から侵略的外来種のアフリカマイマイ、落花生の実から穀物や種子を食い尽くすカパラカブトムシ、果物から果肉を食害するミカンコミバエ…。あらゆる形で外来生物は潜んでいる。

 ある税関の検疫職員は中国メディアに「商業用の貨物や食料以外に、個人の旅行客が持ち込む荷物にも外来生物が潜んでいるのが、骨が折れる」と語っている。中国科学院水資源部の張運彬(Zhang Yuanbin)准研究員は、「外来生物は中国では天敵がいないため、地域の生態系をあっという間に破壊する恐れがある」と指摘。死滅している外来生物は検疫で発見しにくいが、体内に卵がいると繁殖して拡散する可能性もある。

 水際対策にも限界はある。国際自然保護連合(IUCN)が指定する「世界で最も深刻な100種の外来種」のうち、中国ではすでに半数以上が発見されている。2004年には広東省(Guangdong)で南米原産のヒアリが見つかり、中国南部に広がって農作物や昆虫に被害を与えている。2019年には外来種のガやツマジロクサヨトウがトウモロコシ、サトウキビ、落花生、バナナなどの作物に被害を与えた。南米原産の多年生草本植物・ナガエツルノゲイトウも在来種を駆逐している。

 侵入を許した外来生物には当然、駆除対策も行っている。水田などで被害を与える淡水性大型巻き貝のスクミリンコガイに対しては、雑草を駆除して産卵場所を奪ったり、水田でアヒルを飼育してエサとして食べさせたりしている。ヒアリに対しては「トラップ」のエサをまき、巣を作らせて丸ごと駆除する方法を採っている。

 しかし、外来生物の侵入は経済発展に伴う「副作用」の側面があり、完全に駆除する決定的な策はない。一つの国に外来生物が侵入すれば影響は隣国にも及ぶ。検疫の現場で働く一人一人の努力から国際的な協力体制の構築まで、ミクロとマクロの対策が必要とされている。(c)東方新報/AFPBB News