【2月12日 AFP】英首都ロンドンで昨年、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が敷かれていた際に、母親(40)が重い障害のある男児(10)を殺害した。事件をめぐる裁判で判事は11日、精神的に追い込まれた母親に殺された男児はロックダウンの「間接的な犠牲者」だとする見方を示した。

 母親のオルガ・フリーマン(Olga Freeman)被告は、同市西部アクトン(Acton)の自宅で、ディラン(Dylan Freeman)君を殺害。ディラン君は心身に重度の障害があり、24時間体制での介護を必要としていた。

 オルガ被告は昨年8月16日、警察署に自ら出頭し、わが子を殺害したと供述。その後警察は被告宅の寝室で、布団にくるまれ、たくさんのおもちゃに囲まれたディラン君の遺体を発見した。

 検視により、ディラン君は口に詰められた複数のスポンジ片によって気道が制限され、亡くなったことが分かった。

 裁判所が受けた報告によると、オルガ被告は最初のロックダウンの最中に、ディラン君の介護に苦痛を覚えるようになり、その後の夏の数か月間に精神に異常を来したとされる。

 ロンドンにある中央刑事裁判所(Old Bailey)の判事は11日、今回の母親による男児殺害について「まれで絶望的に悲しい」事件と形容。

「さまざまな圧力が重なってのしかかり、心が破壊的な病に襲われてしまうまで、あなたがか弱い子に格別の愛情を傾けた献身的な母親であったことについては、私は全く疑っていない」と語った。

 その上で判事は「どこまでとその程度を明言することはできないが、ディラン君は、新型ウイルスの流行により普通の生活が断絶されたことの間接的な犠牲者だと認識されてしかるべきだ」との見方を示した。

 故殺(計画性のない殺人)の罪を認めたオルガ被告に対しては、精神科病院への無期限入院が命じられた。(c)AFP