【2月12日 AFP】ミャンマー軍のクーデターに抗議する若者が街頭デモに繰り出し、プラカードを掲げている。そこにはこう書かれている──ミャンマーの軍事政権は元彼よりひどくて、フィッシュカレーよりまずくて、何百万人もに拒否されて、生理より苦痛。

 ミャンマーで1日に起きた軍事クーデターに対する抗議で、全国の街頭を埋め尽くす若い世代。彼らは軍部をだしにしたジョークを飛ばし、プラカードには表情豊かで機知に富む、しばしばどぎつい言葉を書いて、ソーシャルメディアの人気を集めている。

 あるプラカードには、事態があまりにひどいため「引きこもりさえ参加している」と書かれている。「私の元彼はひどかったが、ミャンマー軍はもっとひどい」というのもある。

 とりわけ軽蔑の言葉を浴びせられているのは、国軍トップのミン・アウン・フライン(Min Aung Hlaing)総司令官だ。クーデターで民主化運動の指導者アウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)国家顧問を追放し、権力の座に就いている。

 同総司令官の小柄な体格に触れ、「われわれの夢はMAL(ミン・アウン・フライン)の身長より高い」と段ボールに手書きされたプラカード。車窓から「ミン・アウン・フライン、生理よりもあなたを憎む」と出されたプラカードもある。

 ソーシャルメディアでは、ちゃめっ気のあるプラカードの写真が、香港や米国その他の地域のユーザーらによるリツイートやコメントなどで何千回も共有された。

 ヤンゴンに拠点を置くデジタル権利擁護団体「ミャンマーICTフォー・ディベロップメント(Myanmar ICT for Development)」の事務局長タイ・タイ・アウン(Htaike Htaike Aung)氏はAFPに、ソーシャルメディアを生かした運動は「ミャンマーのための新種の、創造的な抗議だ」と語る。

 若い世代は「フェイスブック(Facebook)やティックトック(TikTok)、インスタグラム(Instagram)、ディスコード(Discord)で他の若者を動員している」と同氏。

 49年にわたった軍政下で世界から大きく切り離されていた旧世代と異なり、ミャンマーの若者はインターネットの時代精神とがっちりつながっている。まさしくオンライン世代なのだ。

■「攻める世代を間違えたな」

 多くのプラカードは英語で書かれており、世界の人々に訴えを届けたいという意志が強く表れている。

 性的に過激な歌詞が並ぶ女性ラッパーのカーディB(Cardi B)さんとミーガン・ジー・スタリオン(Megan Thee Stallion)さんのコラボヒット曲「WAP」を、「私たちは平和的に抗議している(We Are Protesting Peacefully)」と言い換えたある女性のプラカードは広く拡散された。

 ソーシャルメディアはメッセージを拡散させるだけではなく、ミャンマーのデモの参加者を香港やタイのユーザーと結び付けている。彼らは抗議デモ中に危険から身を守る策を教え合っている。

 軍政時代、ミャンマーは北朝鮮に次いで携帯電話が普及していない国だった。だが2013年、民主政権が通信事業の国家独占に終止符を打ったことでSIMカードの価格が急落し、安価な中国製スマートフォンが広く普及した。

 タイ・タイ・アウン氏は、インターネットとの接続をすべて遮断するのは、不可能ではないかもしれないが困難だろうと語る。

 軍はすでに国内のインターネットの遮断を試みているが、ユーザーはアクセスが復活するまで、VPNサービスや外国のSIMカードといった手段を用いて、全国的なインターネット切断とソーシャルメディア規制を迂回(うかい)している。

 全国に拡散したあるプラカードには皮肉を込めて、軍部は「攻める世代を間違えたな」と書かれていた。(c)AFP/Laignee BARRON