【2月9日 AFP】タンザニア政府はここ半年以上、祈りがタンザニアを新型コロナウイルスから守っていると、世界に向かって主張している。政府は新型ウイルスの感染抑制対策を講じるのを拒否しているが、「肺炎」による死者が複数確認されており、これに異を唱える声が高まっている。

 最大都市ダルエスサラーム(Dar es Salaam)の公立病院に勤める医師は、報復措置を恐れ、匿名で取材に応じた。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で死亡する人もおり、感染も多数確認されている。しかし、新型ウイルスについて話すことはできない」

 近隣諸国が国境を封鎖し、夜間外出禁止令やロックダウン(都市封鎖)を実施してもなお、ジョン・マグフリ(John Magufuli)大統領は新型ウイルスの深刻さを軽視し続けている。

 同国では昨年4月以降、感染者の報告がない。マグフリ氏は当時、ひそかにさまざまなものに新型ウイルスの検査を行ったところ、パパイア、ウズラ、ヤギなどが陽性反応を示したと明かした。

 またマグフリ氏は6月、祈りによってタンザニアは新型ウイルスから守られたとも主張した。「だからここにいる全員がマスクを着けていない。それは死を恐れていないからだろうか? 新型ウイルスがここには存在しないからだ」

 さらに、新型ウイルスに関する情報が拡散するのを取り締まる目的で、政府の許可なく致死性の病気や伝染病に関する情報の公開を禁止する法律が可決された。

 だが、マスクを着用し、新型ウイルスへの不安を口に出す国民もいる。

 バス停でマスクを着用していた人(28)は、「知人4人が同時期に亡くなった。重度の肺炎が死因だと聞いている。私は自分の命を守っている」と語った。

 一方、マグフリ氏は新型コロナウイルスワクチンについては、「危険」だと主張している。ドロシー・グビシアニ(Dorothy Gwajima)保健相は、ワクチンを輸入する計画はないと述べた。

 マグフリ大統領は先月、国内にいまだ新型ウイルスが存在している可能性を認めた。だが、一部の国民が海外でワクチンを接種し、「奇妙なコロナウイルスを持ち帰る羽目になった」ためだと主張している。

 さらに、「われわれは、この危険な病気との闘いにおいて、神を最優先しなければならない。だが、それと同時に予防措置を講じて、自身の身を守らなければならない」と述べた。(c)AFP