【2月7日 東方新報】「中国史上最大」といわれる賄賂を受け取ったとして、収賄罪などで死刑判決を受けた中国の国有不良債権処理会社「中国華融資産管理」の頼小民(Lai Xiaomin)元会長の死刑が先月29日、執行された。認定された収賄額は計17億9000万元(約292億円)。中国の刑法では収賄罪は死刑の対象ではあるが、近年は実際に適用されるケースはまれ。習近平(Xi Jinping)国家主席が役人や共産党員の腐敗を取り締まる「反腐敗運動」を進める中で、国有会社トップの汚職は「政治犯罪」とみなされ、厳しい処分が下された。

 天津市第2中級人民法院(地裁に相当)は1月5日、頼元会長に死刑判決を言い渡した。頼元会長の上訴は却下され、最高人民法院(最高裁)は判決から3週間余りで死刑執行を命じた。

 判決によると、頼元会長は2008~18年に中国華融資産管理の会長や金融監督官庁の幹部だった当時、資金融資やプロジェクトの発注、人事異動などをめぐり関係者に便宜を図り、総額17億9000万元の賄賂を受け取った。また、2500万元(約4億円)を着服したほか、既婚者でありながら他の女性たちと同居していた。判決ではすべての個人資産没収も命じた。

 頼元会長の汚職が発覚した当時、数十億円の現金を隠していた自宅のロッカーを「スーパーマーケット」と暗号で読んでいたことや、不動産開発プロジェクトの住宅物件に愛人を住まわせていたことも明らかになり、大きな注目を集めていた。

 それ以前に「収賄額のトップ」といわれていたのは、山西省(Shanxi)呂梁市(Lvliang)の張中生(Zhang Zhongsheng)元副市長。1997~2013年に石炭業の許認可で絶大な権力を握り「呂梁のゴッドファーザー」と呼ばれ、違法に10億4000万元(約169億円)の資産を得たとして2018年に死刑判決を受けている。

 一方、2億4600万元(約40億円)の収賄を受けたとする白恩培(Bai Enpei)元雲南省(Yunnan)党書記や約1億4000万元(約23億円)相当の資産を不当に受け取ったとされる朱明国(Zhu Mingguo)元広東省(Guangdong)政治協商会議主席はそれぞれ2016年、執行猶予2年付き死刑を言い渡された。さらなる犯罪が発覚した場合などを除き、2年後に無期懲役に減軽される判決だ。

 頼元会長に対する判決で裁判所は「死刑は慎重に適用する必要がある」としながら、「犯罪の金額が極めて大きく、社会的影響が特に重大だ」と指摘。さらに「収賄の大半は、2012年の第18回共産党大会以降に行われた」と強調した。この党大会では習近平氏が共産党総書記に選出され、翌年に国家主席に就任。「虎もハエもたたく」というスローガンに代表されるように、大物の政治家、企業幹部から一般の役人まで容赦なく汚職を摘発する活動を始めた。

 海外メディアは「反腐敗運動は権力闘争の側面がある」とも指摘しているが、大物幹部の巨額の腐敗にメスを入れ、さらに庶民から「たかり」のような行為をしていたヒラの役人も摘発する取り組みは、多くの国民から支持を得ている。それだけに、現指導部の「金看板」である反腐敗運動に逆行する頼元会長のような巨額汚職は許し難く、死刑のスピード執行という厳しい措置を下したとみられる。(c)東方新報/AFPBB News