【2月5日 AFP】男子プロテニス協会(ATP)と国際テニス殿堂(International Tennis Hall of Fame)は4日、四大大会(グランドスラム)シングルス通算5勝を誇り、1955年に競技の歴史に残る偉業を成し遂げた米国のレジェンド、トニー・トラバート(Tony Trabert)氏が3日に90歳で死去したことを明らかにした。

 トラバート氏は、1953年の全米オープンテニス(US Open Tennis Championships、当時は全米選手権)と1954年の全仏オープンテニス(French Open、当時は全仏選手権)を制すと、1955年には両大会とウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon)の3大会で優勝を果たした。

 現役引退後は指導者となり、1976年から1980年まで男子国別対抗戦デビスカップ(Davis Cup)の米代表チームを率いて1978年と1979年に優勝を成し遂げた実績を持っている。また、30年以上にわたりテレビ解説者として活動したほか、執筆活動にも携わり、1970年に名を連ねた国際テニス殿堂では2001年から2011年まで会長を務めた。

 国際テニス殿堂でトラバート氏の後任に就いたスタン・スミス(Stan Smith)会長は、「彼は偉大な王者とは何たるかを示してくれただけではない」とすると、「賢明なコーチ、メンター、そして公平で影響力のあるリーダーとして、彼はロールモデルでもあった。この競技に還元してくれる人物で、あらゆる面でテニス界の素晴らしいアンバサダーだった。私や大勢にとって良き友人だった彼がいなくなり、この上ないほど寂しくなる」と追悼した。

 トラバート氏は現役時代の1955年に38連勝を含めて通算106勝7敗の成績をマークし、メジャー3勝をはじめ合計18個のタイトルを獲得。一時は10大会連続で優勝を果たし、同年のグランドスラムにおける唯一の黒星は、ケン・ローズウォール(Ken Rosewall)氏と対戦した全豪オープンテニス(Australian Open Tennis Tournament、当時は全豪選手権)準決勝だった。

 1989年にマイケル・チャン(Michael Chang)氏が17歳で全仏オープンを制するまで、同大会の男子シングルスで優勝した最後の米国人選手だったトラバート氏は、1シーズンでグランドスラム3大会を制覇した数少ない選手の一人となっている。

 これまでその偉業を成し遂げたのは、ドン・バッジ(Don Budge、1938年)氏、ロッド・レーバー(Rod Laver、1962年と1969年)氏、マッツ・ビランデル(Mats Wilander、1988年)氏のほか、現役選手ではロジャー・フェデラー(Roger Federer、2004年、2006年、2007年)、ラファエル・ナダル(Rafael Nadal、2010年)、ノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic、2011年と2015年)となっている。(c)AFP