■「一生に一度」の経験

 また、2日に緊急事態宣言が3月7日まで延長された中で、同月25日には全国をまわる聖火リレーが始まる。行事の簡素化やソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)などのウイルス対策は講じるが、リレーには1万人のランナーが参加する見込みとなっている。

 道場で空手を教える岡野和男(Kazuo Okano)さんもその一人だ。岡野さんは、東京五輪で空手が実施競技に採用されたことで、聖火ランナーを務めたいと思ったが、昨年のリレーは開始2日前に延期になった。それでも岡野さんは、沿道のギャラリーが少なくても走りたいと思っている。

「無観客でも全然うれしい。一生に一度。しかも日本の五輪じゃないとできない。できればやりたい」

 田中よしこ(Yoshiko Tanaka)さんは、五輪では観客の有無が全てだと考えている。

 田中さんは抽選で約30口申し込み、家族で柔道のチケットを4枚手に入れた。しかし、1998年の長野冬季五輪のスピードスケートも生で見たという田中さんは、今回の五輪では当時のような興奮は期待できないと考えている。

「(長野では)初めて入ったときのあまりの人の多さと、始まるときのびっくりするような静けさ、そして決まったときの歓声を今でも覚えている。やっぱり、生で見るのはこんなに違うのかなと思った」

「今度、東京五輪を無観客で行うということになってしまっては、それができない」

 田中さんも1年、もしくは2024年への再延期を望んでいるが、中止になったとしても理解できると話している。

 ボランティアの垂見さんは、感染が収まっていない中で強行開催すれば、希望と平等という五輪のメッセージ性が失われてしまうのではないかと考えている。

「もしコロナが完全に収束した状態で開催するのであれば、いろんな国から来た人も『やったぞ。コロナに打ち勝ったぞ』という喜びにあふれた状態で開催できるかと思う。だけど今のような状態のまま、押し切って開催してしまうと、世界から冷ややかな目で見られるのではないかと思う」 (c)AFP/Andrew MCKIRDY