【2月3日 東方新報】世界最大の日用雑貨卸売市場があり、「世界のスーパーマーケット」「100円ショップの里」といわれる中国浙江省(Zhejiang)義烏市(Yiwu)。世界から1日20万人のバイヤーが訪れる巨大問屋街は新型コロナウイルスで大打撃を受けたが、インターネットに活路を切り開き、2020年の取引額は前年比プラスを実現した。計画経済の時代でも行商を続けていた自主自立の街は、たくましく商売を続けている。

 義烏市は上海から約300キロ、高速鉄道で約1時間半。巨大施設「義烏国際商貿城」の建物群は、東京ドーム135個分の640万平方メートルの市場を持ち、7万以上のブースがひしめく。プラスチック製品や食器、おもちゃ、金物、文具、アクセサリーシャツやパンツ、スニーカー、衣料、キッチン用品、さらにバインダーのリング留め具だけの店、修正テープだけの店、輪ゴムだけの店…。ありとあらゆる日用品が並ぶ。各ブースはわずか4平方メートルの広さしかないが、「一つの問屋に一つの工場」という生産力が強み。店頭で「このスニーカーどう?」と海外バイヤーと商談し、契約が成立すればすぐに1000足を製造できる。100円ショップの仕入れ先として日本人バイヤーも多く、ほぼ世界全域の210か国・地域と取引をしている。

 しかしコロナ禍が広がった昨年初めから中国が入国制限を始めるとバイヤーは姿を消し、巨大問屋街はゴーストタウンと化した。その苦境を乗り越えるため、対面販売の街・義烏はインターネット販売に乗り出した。

「ほら、このハサミ、こんなに小さいのに何でも切れるんですよ」――ハサミ専門店の店主がスマートフォンのアプリを通じて、世界中のバイヤーに生中継で商品の品質をアピール。画面上のチャット機能で質問にも回答する。多くの店主がこうしたライブ販売に乗り出し、効果的な商品の売り込み方を教える講座も登場した。

 昨年10月下旬には、卸売市場の運営会社「中国小商品城」が義烏の問屋と世界の小売業者をマッチングさせるオンライン取引サイト「Chinagoods」を開設。5万以上の問屋と50万人のバイヤーが登録した。運営会社の王棟(Wang Dong)社長は中国メディアに「外国人バイヤーが戻ってくるのを待っていられない。オンラインで苦境を打開したい」と話す。最近発表された統計では、義烏市場の2020年の輸出入額は前年比5.4ポイント増の3129億元(約5兆739億円)に達し、コロナ禍の逆風の中でプラス成長を達成した。

 義烏市は大都市からも沿岸部からも離れており、地理的にビジネスに有利な土地柄とは言えない。しかし、中華人民共和国が1949年に誕生し、個人的な商取引が禁じられた計画経済の時代も、農民がサトウキビから生産した砂糖などの数少ない特産物を行商して日用雑貨と交換し、利ざやを稼いできた。豊かな地域が鶏の肉を食べて残った羽や毛をサトウキビと替えて農地の肥料にもしており、その取引は「鶏毛換糖」と言われた。義烏では「鶏毛換糖」の名目で商取引が黙認され、改革開放経済が本格化する1980年代に行政が市場を公認するようになった。この流れから現在の卸売市場に発展した。たくましく、したたかに生きてきた義烏商人のDNAを受け継ぐ卸売業者たちは、歴史的なコロナ禍もタフに乗り越えようとしている。(c)東方新報/AFPBB News