【1月29日 東方新報】中国各地で、空気が新鮮で自然が豊かな地域を「天然酸素バー」というエリアに認定する取り組みが進んでいる。物質的に豊かになった一方でストレスを抱える都市の住民が、澄んだ空気を思い切り吸い込み、心身をリフレッシュする地域として人気に。自然を生かした観光でまちおこしを図る地元とウィンウィンの関係になっている。

 天然酸素バーの認定は、中国気象局傘下の中国気象サービスセンターなどが2016年から始めた。全国約3800か所の国家・省レベルの森林公園、湿地公園、自然保護区がある自治体などを対象に、大気や水の質、気候、景観、森林・植物の生育、野生生物の生息状況、自然を生かした観光プランの内容などを審査。2019年までに約200か所が認定されている。今月には、雲南省(Yunnan)紅河ハニ族イ族自治州(Honghe Hani Yi Autonomous Prefecture)の13の県、自治県、市がすべて認定を受け、「中国初の天然酸素バーの自治州が誕生した」と話題となった。同自治州は年間平均気温が15~20度で年間日照時間が1800~2500時間あり、四季を通じて気候が温暖。美しい棚田やワインの産地、野鳥が生息する湿地、自然と共存する少数民族文化、地元の食材を生かした料理などが評価された。

 中国では都市の大気汚染が最も深刻だった2015年ごろから、「洗肺」という言葉が流行し始めた。「肺を洗う」すなわち「きれいな空気を吸う」という意味。「ちょっと日本へ洗肺に行ってくる」というように、海外旅行や国内の自然観光地へ行く時に使ったりする。中国の経済成長に伴い都市住民の生活水準は上がったが、大気汚染や食の不安、過酷な残業など健康不安やストレスに悩まされることも増えた。週末のプチ旅行や連休の長期旅行で「洗肺」する受け皿として、天然酸素バー認定地の人気が高まっている。

 天然酸素バーに認定されるのは、都市から離れて目立った産業がない地域が大半だ。認定リストを見ると、政府が「貧困県」と定めた地域が多い。天然酸素バーに認定されると翌年の観光客は2倍になる地域が多く、官民が総力をあげて認定を目指す自治体も多い。新型コロナウイルスが猛威を振るった2020年は中国各地の観光地でおおむね観光客が減少したが、牧畜民の生活文化や独特の木造建築郡が残る新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)テケス県(Tekesi)や美しい棚田で知られる陝西省(Shaanxi)漢陰県(Hanyin)など、2019年の観光客を上回った天然酸素バーの認定地もあった。

 習近平(Xi Jinping)国家主席は「緑水青山就是金山銀山(澄んだ水と美しい山そのものが金山、銀山である)」と繰り返し強調しており、環境保護や資源の節約、自然と調和した発展は中国で年々重要な理念となっている。「自然はあるけど仕事はない」というような経済発展から取り残された地域が、「豊かな自然から仕事が生まれる」という新しいスタイルを実現する最先端地域になりつつある。(c)東方新報/AFPBB News