【1月29日 東方新報】中国のマクドナルドで13日から、新年限定品として「中華ハンバーガー」ともいわれる肉夾饃(Roujiamo)が発売された。さらに湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)のケンタッキーフライドチキン(KFC)では18日から、地元名物・熱乾麺(Reganmian)が登場。「米国のファストフードチェーンが中国の国民食を次々とメニュー化している」と話題になっている。

 肉夾饃は、煮込んだ豚肉の細切りを蒸しパンに挟んだ陝西省(Shaanxi)発祥の食べ物。蒸しパンはマフィンに似た見た目で、中国各地で軽食として親しまれている。マックでは飲み物とセットで9元(約144円)といったリーズナブルな値段で販売した。KFCは武漢市内の約100店舗で、新年のサプライズメニューとして熱乾麺を7元(約112円)で販売し、初めて店内に箸を置いた。熱乾麺は、熱湯で乾麺をサッとゆでてゴマみそなどをかけた汁なし麺。多くの武漢市民は朝食でこれを食べるのが基本的なライフスタイルだ。KFCでは単品メニューのほか、豆乳や油条(揚げパン)などのセットも用意。包装紙や器に書かれた「KFC」の表示を除けば、普通の中華料理と同じメニューだ。

 KFCはこれまでも中国人が朝食に好むおかゆやチャーハン、螺螄粉(タニシのビーフン麺、Luosifen)などの商品を販売している。中国ではKFCはマックより店舗数が多く、長年の「ローカル化戦略」が功を奏した結果ともいわれる。そして中国の経済成長が著しくなりマックやKFCにとってさらに重要な市場となる中、旺盛な市民の消費力を取り込むためメニューのローカル化を進めている。

 ただ、マックの肉夾饃は購入した客から不満が相次いだ。広告写真では蒸しパンからはみ出すほど肉が詰め込まれているが、「肉がほとんどない」「これでは2枚のバンズを重ねただけ」とインターネットに実物の写真を掲載して批判。中国では、ファッションモデルが服を着た写真と実際に自分が買って着てみた写真をネットで並べて表示し、そのギャップを自虐的に表現する「売り手のショーと買い手のショー」という遊びがはやっているが、マックの広告写真と実物の商品を並べて「これも売り手のショーと買い手のショーだ」と揶揄(やゆ)されるようになった。マクドナルド側は販売開始翌日の14日、SNS上で「店舗によって肉の分量にばらつきが出ることはある」と釈明。その後、ネットでは「マックの肉夾饃の肉が多くなった」「改善されたようだ」という多数の書き込みがあった。

 KFCの熱乾麺はそうした苦情は受けていないが、地元メディアによると「コスパはあまり良くない」「味はまあ、許容範囲」という市民の声が伝わってくる。武漢では個人が営む熱乾麺の店が林立し、ベテラン職人が腕によりをかけて何十種類もの調味料を合わせた「秘伝の味」の熱乾麺を5元(約80円)前後で売っており、「わざわざ7元を払ってKFCの熱乾麺を食べなくても」と受け止める市民もいる。「郷に入っては郷に従え」というが、味覚のローカル化戦略はなかなか「言うは易(やす)く、行うは難(かた)し」という面があるようだ。(c)東方新報/AFPBB News