【11月27日 東方新報】中国で植物由来の人造の代替肉・植物肉市場がひそやかに確実に拡大している。

 植物肉といえば、アメリカのビヨンド・ミート(Beyond Meat)が9月に中国に生産拠点を設けると発表して話題を呼んだが、実は中国発の「珍肉 (ZhenMeat )」や「株肉」、台湾発の「星期零(Starfield)」など中華系ブランドが続々と台頭しており、しかもビヨンド・ミートやインポッシブルミートよりも安価で市場に提供している。中国には菜食主義者がすでに5000万人、人工の4~5%いるという推計もあり、近い将来、世界最大の植物肉市場として、世界各国の植物肉ブランドの激戦区となるとみられている。

 ビヨンド・ミートが中国のケンタッキーフライドチキン(KFC)、スターバックス(Starbucks)などに代替肉を提供し始めたあと、中国発ブランド代替肉も中華系ファストフードチェーンやバー、あるいは中華レストランにじわじわと進出してきている。Eコマース最大手の阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)傘下のスーパー盒馬生鮮では、7月からスーパーとして初めて植物肉を取り扱い始めた。だが味や触感に特にうるさい中国人消費者に、本当にこの代替肉が定着するのだろうか。

 中国新聞社(CNS)記者が北京のショッピングモール・国貿商城三期に入っているセルフサービス式火鍋レストランチェーン・許小樹麻辣燙を取材したところ、鍋に入れる具の棚には植物肉団子が並んでおり、多くの客がこれを選んでいた。「ちょっとだけかすかすだが、(原料の)豆くささはなく、歯ごたえもあり、なにより健康にいい」とある女性客は植物肉団子を選んだ理由を語る。

 新興人造肉企業の珍肉が提供するこの植物肉団子は2個7元(約110円)。許小樹レストランチェーン創業者の許雅君(Xu Yajun)氏によれば、許小樹氏は北京に5店舗あるがいずれも植物肉団子を提供し、平均して10人に1人は、これを注文しているという。

 今年下半期にはいってから、ケンタッキー、スターバックス、喜茶(HEYTEA)、徳克士(Dicos)といったファストフードチェーンは植物肉商品をメニューに入れている。またフォーシーズンズホテルなど高級ホテルのレストランも昨年暮れから植物肉を使い始めた。ただ一般的な中華料理ファストフードとしては許小樹がおそらく最初に代替肉を取り入れたケースだろう。これに続き広東料理チェーンの金鼎軒も目下、試験的に植物肉メニューを導入している。

 ただ今のところ、洋食系レストランとバーなどが最も代替肉・植物肉に対して積極的だ。北京の鼓楼大街にあるバー・Zarahでは10月から珍肉製の植物肉を利用したパスタメニュー2品を出している。バー街の三里屯(Sanlitun)のメキシコレストラン・墨圏児やQmexなども植物肉メニューに取り組んでいる。中国新聞社の最近の調べでは少なくとも30近い人気レストラン、カフェレストランで植物肉メニューを出している。 Qmexの責任者によれば、三里屯店で9月から植物肉ハンバーガーを出したところ、ハンバーガーメニューの35%を占めるようになったという。「これは驚くべき数字だ」という。

 しかもQmexでは本物の肉を植物肉バージョンであっても、ほとんど値段はかわらない。Qmexが使用している牛肉代替用の植物肉は珍肉製だが、コストはふつうの冷凍牛肉と変わらないか、わずかに安いだけ。外国の有名ブランド代替肉・ビヨンド・ミートやインポッシブルの植物肉はむしろ普通の牛肉の3~4倍高いくらいだ。珍肉創業者の呂中茗(Lv zhongming)氏は「技術の向上と流通産業のサプライチェーンがうまくできたことがコスト削減の主要な要因だ」という。

 目下国内市場の植物肉類製品は、ハンバーグ、肉団子などのひき肉製品を主力にしており、西洋料理の調理により適している。呂中茗氏は、植物肉はもっと中国にローカライズされていくべきで、さらに中華料理に合うように開発したい、という。「いわゆる塊肉を形成する肉繊維構造を再現する次世代技術が必要だ」

 また、風味を向上させるために、植物肉企業は原料のエンドウタンパクや大豆タンパクに含まれる豆臭さを除去する努力をしてきたが、これに「肉の味や香り」を加える必要があり、これにはさらにハイレベルの技術が必要だという。

 消費者としては、化学調味料などが添加されるのではないかと心配だろう。業界の専門家たちによれば、技術が成熟する前に、植物肉に健康ブランドのイメージがついてしまったので、業界としてこれを守らねばならないのが悩ましいところだという。

 植物肉の味を向上させるならば、国家安全基準内で添加物を加えて、肉の味や香りをつけることもできる。だが目下、業界は健康食イメージを守るために添加物は自主規制している。中国植物性産業連盟の薛岩(Xue Yan)事務局長は「連盟はまさに植物肉産業の上下流企業の基準制定をリードしようとしているところだ」という。「技術による問題解決は近道ではないが、この市場を本当によくしたいならば、さらに地道な研究開発に踏み込むしかない。産業発展は最終的にローカライズした味や消費習慣、安全基準に見合った安全基準の製品を開発できるかどうかにかかっている」と話している。

 中国ではアフリカ豚コレラのまん延に続き新型コロナウイルス感染症の大流行で、食肉流通市場が大きな打撃を受け、豚肉などが高騰した。また肉食が増えたことによる生活習慣病の増加などからビーガンも増えている。国際環境の変化にともない中国国内で食糧安保問題が議論されるようになっており、こうした植物肉開発への期待はむしろ欧米よりも高いかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News