【1月21日 CNS】中国で昨年末から今年に入り、職場での過酷な残業についてのニュースが相次ぎ、労働法規を無視した「残業文化」について議論を呼んでいる。

 2020年12月29日、電子商取引サイト運営会社大手の拼多多(Pinduoduo)の女性従業員が午前1時30分に仕事を終えて帰宅途中に倒れ、突然死した。報道によると、常態化していた残業による過労が死因と関連しているという。

 今月6日には、「大衆医学(Popular Medicine)」誌などが発表した「2019上海会社員健康指数リポート」で、「上海市のサラリーマンの99%が健康診断で異常があった」というニュースがインターネットの検索ランキングの上位となり、閲覧数が2億件を超えた。また、「1990年代生まれの若者は健康診断を受けない」という話題の閲覧数は5億7000万件に達し、「健康診断を受けなければ病気じゃない」という自虐的な書き込みが相次いだ。

 こうしたニュースから、インターネットでは「『996』や『007』の残業文化にどう向き合うか」「命と金と交換するのが当たり前なのか」という議論が起きている。

「996」とは、午前9時に出社して午後9時に帰社(12時間労働)する勤務体制で週6日働くという意味。「007」は午前0時に出社して午前0時に帰社(24時間)する勤務態勢で週7日働くという意味だ。実際には不可能だが、「996」を超える過酷な勤務態勢を表現している。

 中国では2019年、インターネット業界の若いプログラマーらが「996勤務」を告発し、社会問題となった。しかし現在でも多くの企業で「残業文化」が常態化しており、「996」勤務を拒否したことで新卒者が解雇されたという報道もあった。

 中国労働関係研究所行政学部副部長の楊思斌( Yang Sibin)教授は「過度な残業は『以人民為中心(人民を中心とする)』という基本理念に反し、政府が進める『健康中国』戦略に違反している」と指摘する。労働法と関連規則では、中国の標準的勤務体制は1日8時間、週40時間勤務が原則であり、従業員を休日に働かせれば代休を保障するか残業代を払わなければならない。平日の残業も労働組合との協議に基づき、通常は1日1時間以内、特別な事情があっても1日3時間を超えてはならない。従業員の健康維持のため1か月の残業時間も計36時間以内と定めている。

 楊教授は「違法な労働を強いる企業を厳しく罰し、労働者の権利を守る立場である労働組合の監督機能を強化すべきだ」と提言している。(c)CNS/JCM/AFPBB News