【2月6日 AFP】グウェイ・ユナ(帰玉娜、Gui Yuna)さんには、いま語っても涙があふれる思い出がある。7歳の時、交通事故で右脚を失ったこと、それから学校のいじめっ子たちに松葉づえを蹴とばされ、倒されたこと。

 でも今なら彼らも手を出せないだろう。35歳になる彼女は大会受賞歴のあるボディービルダーであり、元パラリンピック選手だ。その心を打つ物語が中国のソーシャルメディアで拡散している。

 2004年のアテネ・パラリンピックで走り幅跳びに出場したグウェイさんは、昨年10月、初めてボディービル大会に参加し優勝した。

 松葉づえを片手に、ハイヒールを片足に、ビキニ姿でステージを圧倒する彼女の画像や映像が中国メディアを席巻し、かなりの数のオンライン支持者を獲得した。

 障害者が多くの場合、隅に置かれてしまう中国ではあるが、鋼の意志やポジティブ思考が持ち前のグウェイさんは、人に力を与える存在として国内で称賛されている。

「私が勝ったわけは、おそらくプロの技術や意識や筋肉ではないと思う」とグウェイさんは言う。「ステージに立って、みんなに自分を見せようとする自信と勇気ではないか」

 グウェイさんは上海のジムでの激しい訓練の後、インタビューに答えてくれた。訓練の模様は、動画投稿アプリのティックトック(TikTok)を通じて定期的に20万人のフォロワーに送られる。

■「3本足のネコ」

 学校帰りにトラックにはねられた運命の日。その記憶はほとんどないという。

 だが、忘れられないのは、片脚となった彼女に対する他の生徒たちの仕打ちだった。松葉づえを蹴とばされたり、座る椅子をいきなり引っ張られたりした。

「不具とか3本足のネコとか言われました」とグウェイさんは語る。30年前の話だが、涙は今でも込み上げてくる。

「ほとんどの場合、汚い言葉でしたが、時々暴力も受けました」と、当時を振り返る。

「初めて転ばされたときには泣いたけれど、慣れてくるとこう考えました。好きなようにいじめてもいい。でも私は大丈夫。強い心を持っているから」

 中国南部の南寧(Nanning)市出身のグウェイさんは、生まれる前に父親を失くし、母親の手一つで育てられた。

 逆境の中でも、彼女に運動能力と気力が備わり、2001年からパラリンピック競技に取り組んだ。2004年アテネ大会で中国代表として、走り幅跳びで7位となった。

 走り高跳びや、その後アーチェリーも行い、2008年北京五輪・パラリンピックの聖火リレーにも参加している。