【1月30日 AFP】カリブ海(Caribbean Sea)の国、ハイチのカカオ産業がゆっくりと発展しつつある。南米のカカオ大国と比べると規模は小さいが、今や数千人の農民の収入を増やし、奥深い食文化は富める国のものという固定観念に一石を投じている。

 カカオの年間生産量は、隣国ドミニカ共和国の7万トンに対し、ハイチはわずか5000トン。だが、ハイチのカカオ産業は近年発展し始めたばかりだ。

 2001年、ハイチ北部のカカオ協同組合の連合体「フェカノ(Feccano)」が同国で初めて団体として、農家の利益を優先する取引を組織化した。組合員の手掛けた豆は発酵すると、上質で芳醇(ほうじゅん)なココアになる。フェカノは、この高い品質を掲げて海外市場に参入した。

■ハイチの誇り

 ショコラティエ(チョコレート菓子職人)のラルフ・ルロワ(Ralph Leroy)さんにとって、ラム酒のガナッシュを作ること、しかもハイチ産のカカオで作ることは当たり前の選択ではなかった。ルロワさんは自分が手掛ける全ての作品で、ハイチ産カカオを使っている。

 カナダ・モントリオールに数年滞在してハイチに帰国したとき、ルロワさんは高級ファッション専門のスタイリストだった。チョコレート菓子業界への転向は、料理の見本市でチョコレート製の服を作ったことがきっかけだった。

 菓子職人として1年間の修行に出たイタリアで、ルロワさんの情熱と誇りに火がついた。「最初の週に、先生から『チョコレートはヨーロッパのために作られるものだ。あなたたちはあちらでココアを育てる、私たちがココアを買って仕事をする』といわれて侮辱されたように感じたんです」

 ルロワさんは2016年にチョコレート会社「マカヤ(Makaya)」を設立。ルロワさんのチョコレート菓子工房が手掛ける作品はパーティーなどで大反響を呼んでいる。会社にはルロワさんの情熱を共有する従業員約20人が在籍している。

「一番うれしいのは、ハイチ人が海外旅行に行く前にたくさんの土産品を買いにここへ来てくれることです。彼らの誇りになっているのです。それから欧州から来た人々が、在庫をすべて買ってくれるときは…いい仕事をしていると自分に言い聞かせます」とルロワさんは笑いながら語った。(c)AFP/Amelie BARON