【1月13日 CNS】中国の電子商取引サイト運営会社「拼多多(Pinduoduo)」の若い女性従業員が昨年末に突然死したことをきっかけに、インターネット企業の過酷な勤務状況に批判がわき起こっている。

 死亡したのは、1998年生まれの張さん。新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)ウルムチ市(Urumqi)で働いていた張さんは昨年12月29日午前1時半ごろ、同僚たちと歩いて帰宅中、突然おなかを抱えて路上に倒れ込んだ。すぐに病院に搬送され6時間にわたり救命措置を受けたが、あえなく息を引き取った。

 その後、同僚とみられる人がSNSで「彼女が所属した部門では『残業文化』が常態化し、午前2時か3時まで仕事をすることが多かった」と明らかにすると、ネット上で次々と転載されて大きな注目を集めた。拼多多も事実を認めざるを得ず、同社の本社がある上海市の労働管理局は、同社の雇用実態について調査を始めている。

 中国のインターネット業界では2019年3月、若いプログラマーたちが「996勤務」を告発し、社会問題となった。「996」とは「朝9時から夜9時まで、週6日働く」という過酷な勤務体制を意味する。「1日8時間、週5日勤務」と定めた中国の労働法に明らかに違反していた。阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)の総帥、馬雲(ジャック・マー、Jack Ma)氏は「996勤務は大きな幸福」と996勤務を擁護する発言をし、ネット上で「炎上」。その後、「996について弁護しない。奮闘している人たちに敬意を表する。誰にでも自分のワークスタイルを選ぶ権利がある」と訂正した。

 そして今回の騒動で、ネット業界は今も「996勤務」のような長時間労働が常態化している実態が浮き彫りになった。また、モバイル向けショートビデオアプリ会社「快手(Kuaishou)」は今月1日から週休2日を公式に取りやめ、週6日勤務と週5日勤務を隔週で繰り返す「大小週勤務」を導入すると社員に通達。大小週勤務は、ショートビデオアプリ「抖音(Douyin)」を手がける字節跳動(ByteDance)や拼多多なども導入しているという。

 中国人民大学(Renmin University Of China)経済学部の于沢(Yu Ze)教授は「残業文化は多くの企業に存在するが、インターネット企業では特に顕著だ」と指摘する。ネット業界は常に顧客への迅速な対応が求められ、経営側が従業員の作業効率について厳しい要求を求める傾向が強い。また、人件費の削減が収益を高める手法の1つとなっており、人間的な労働環境を無視することにつながっているという。

 于沢教授は「残業文化をなくすためには、労働者の権利保護を徹底することと、企業がコストカットでなく技術革新で収益を上げる健康的なモデルに転換するよう、導く必要がある」としている。(c)CNS-北京日報/JCM/AFPBB News