【1月8日 AFP】インドで、村人たちが身寄りのない農民の遺体を銀行に運び込み、故人の口座から火葬費用を引き出した。警察が7日、明らかにした。

 亡くなったのはマヘシュ・ヤダブ(Mahesh Yadav)さん(55)。インド東部ビハール(Bihar)州の村で5日早朝、長患いの末に死去した。当局がAFPに明らかにしたところによると、遺体の第一発見者は、近隣住民らだった。

 近隣住民らは火葬費用を工面するため、ヤダブさんの家を捜索し、預金通帳を見つけた。残高は1600ドル(約16万6000円)だった。

 地元警察のアムレンダー・クマール(Amrendar Kumar)氏によると、近隣住民らは5日午後、その通帳を手にヤダブさんの遺体を銀行に運び込み、預金が払い戻されるまで居座った。

 村人たちは、「預金が下ろせないなら、ヤダブさんを火葬しない」と述べ、銀行に圧力をかけた。地元警察の介入後、銀行は最終的に預金の一部を払い戻した。

 カナラ(Canara)銀行のサンジーブ・クマール(Sanjeev Kumar)支店長は、「こんなことは初めてだった」と語った。「1時間余りがたった頃、私が135ドル(約1万4000円)を渡すと、村人たちはようやく銀行を出て、遺体と一緒に火葬場に向かった」

 近隣住民のシャクンタラ・デビ(Shakuntala Devi)さんによると、ヤダブさんは土地を持っておらず、政府の支援も受けていなかった。

 デビさんは、「ヤダブさんが何か月も病気で苦しんでいたのに、面倒を見る人は誰もいなかった。だから私たちが食事などを差し入れしていた」とAFPに語った。(c)AFP