【1月17日 AFP】約20年前にふ化したチョウザメたちからキャビアを取り出し、新年の祝いに向けて出荷する時が来た。オーストリア・ザルツブルク(Salzburg)近郊の養殖場で、長靴を履いたシュテファン・アストナー(Stefan Astner)さんは、アルビノ(先天性色素欠乏症)のチョウザメを品定めする。

 アストナーさんは、希少な白いチョウザメを養殖している小さないけすに網を漬け、「超音波で(卵が)たくさん入っていることは確認してある。取り出しは間近だ」と説明した。

 塩漬けにされたチョウザメの卵であるキャビアは世界で最も高価な食材とされているが、養殖以外のものの多くは絶滅の危機にひんしている。

 だが、ザルツブルク近郊の村グレーディヒ(Groedig)では、アストナーさんが働いているような養殖場が、より持続可能な方法でキャビアを提供している。

 養殖場の所有者、バルター・グリュエル(Walter Gruell)さんは、世界に約2500人いるチョウザメ養殖業者の一人。世界チョウザメ保全協会(World Sturgeon Conservation Society)の2018年版の最新資料によると、各国の養殖業者らは合わせて年間415トンのキャビアを生産している。

 だが、チョウザメの養殖には忍耐を強いられる。巨額の投資が必要な上、その投資はチョウザメが抱卵するようになるまで何年も回収できない。しかも、面倒な養殖過程を飛ばして楽に稼ぎたがる窃盗団に盗まれなければ、の話だ。

 グリュエルさんは外科手術のように正確な手さばきで、白い雌のチョウザメを開腹した。16年前に生まれたチョウザメだ。クリーム色の卵をゆっくりと取り出し、すすぎ、重さを量る。魚自体と同じく、キャビアも白い。

 チョウザメの専門家であるウィーン天然資源大学(BOKU)のトーマス・フリードリヒ(Thomas Friedrich)氏によると、白キャビア専門のチョウザメ養殖業者は世界に40人もいない。

 色素の有無が味に影響することを示す研究結果はないものの、グリュエルさんはアルビノの卵の方がおいしいと確信していて、「通常の黒いキャビアよりも、甘く、滑らかだ」と評している。

 消費者は、特別なものには喜んで財布を開く。グリュエルさんがさばいたチョウザメからは、600グラムのキャビアが採れた。黒いキャビアの3倍以上、約8000ユーロ(約100万円)相当の価格がつく。