【1月2日 AFP】パキスタンで、イスラム教徒に破壊されたヒンズー教寺院が州政府の公金で再建されることになった。州の情報相が1日、明らかにした。

 昨年12月30日、パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ(Khyber Pakthunkhwa)州の州都ペシャワル(Peshawar)から南東に約100キロ離れたカラク(Karak)地区にある辺境の村で、約1500人のイスラム教徒がヒンズー教寺院を襲撃し、大型のハンマーで壁をたたき壊して放火。イスラム教徒らはそれ以前から、ヒンズー教団体が所有する寺院に隣接した建物の改修に抗議していた。

 同州の情報相、カムラン・バンガシュ(Kamran Bangash)氏は、「攻撃で(寺院が)損壊したことを遺憾に思う」として、AFPに対し、州首相が寺院および隣接する建物の再建を指示したことを明らかにした。

 バンガシュ氏によれば、ヒンズー教徒社会の協力を得て早急に再建工事に着手し、今後は寺院の警備も行われる。

 パキスタンの最高裁は当局に対し、寺院の破壊について報告書を提出するよう命じている。

 被害を受けた寺院は、1997年にも同じような状況で破壊されている。寺院がある地域に居住するヒンズー教徒はいないが、1947年にパキスタンがインドから分離独立する前に同地で亡くなったヒンズー教の聖人をあがめるため、この寺院と、聖人をまつった廟(びょう)をヒンズー教徒がよく訪れている。

 カラク地区の警察本部長はAFPに対し、事件に関与したとして45人前後の身柄を拘束したことを明らかにした。その中の一人は地元のイスラム教指導者で、暴徒を扇動した容疑に問われている。パキスタン最大級のイスラム教政党、ジャミアト・ウレマ・エ・イスラム(JUI-F)カラク地区支部長についても同様の措置を取る方針だという。

 人口の97%をイスラム教徒が占め、ヒンズー教徒が2%にすぎないパキスタンで、宗教的少数派への差別と暴力は珍しくない。米国は昨年、パキスタンを、信教の自由の侵害が「特に懸念される国」に指定している。(c)AFP