■大坂もマスクで抗議

 こうした抗議活動は6月をピークにやや沈静化したが、8月にウィスコンシン州でジェイコブ・ブレーク(Jacob Blake)さんが銃撃される事件が起こると、選手の抗議は再び激しさを増した。

 NBAのミルウォーキー・バックス(Milwaukee Bucks)は銃撃後に試合を3日間ボイコット。同じ動きはサッカーや女子バスケ、野球でもあり、テニス界でも大会が一日休止になった。全米オープンテニス(US Open Tennis Championships 2020)を制した大坂なおみ(Naomi Osaka)は大会中、差別による犠牲者の名前が書かれたマスクを日替わりで着用した。

 これまで選手の抗議にあまり良い顔をしてこなかった各種スポーツの統括団体も、2020年には大きく方針を転換した。

 ドイツサッカーのブンデスリーガ1部で、4選手がフロイドさんとBLM運動を支持するメッセージを発し、懲罰の対象になりそうだということが分かると、それまで政治的、宗教的、個人的なメッセージを禁止していた国際サッカー連盟(FIFA)は姿勢を軟化させ、処分を下す前には「常識」に照らして「文脈」を考慮するよう、主催団体に求める声明をすぐに発表した。

 最も驚きだったのは、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)が、「全ての人類のため、人種的、社会的正義の支持を表明する」行為は処分の対象にしないという、国際オリンピック委員会(IOC)と対立する可能性のある方針を発表したことだった。

 新型ウイルスの影響で1年延期になった東京五輪を前に、IOCはまだ選手の抗議に関する明確な方針は定めていない。しかし、1968年メキシコ五輪の表彰式で、米陸上選手のジョン・カーロス(John Carlos)氏とトミー・スミス(Tommie Smith)氏が拳を突き上げる「ブラックパワー・サリュート(Black Power Salute)」を行ってから半世紀以上がたつ中で、IOCは選手から意見を募った上で、抗議禁止をうたった現行ルールの変更を検討すると話している。

 メキシコ五輪の象徴になったカーロス氏は、選手の社会活動が活発化した2020年を喜び、「まだ今後に向けた出発点にすぎないが、人々に注目してもらうことはできた」と話している。(c)AFP/Rob Woollard