【12月25日 AFP】欧州連合(EU)と英国は、今年1月の英EU離脱(ブレグジット、Brexit)から約10か月にわたって困難な交渉を続けてきた新たな貿易協定に24日、合意した。

 今月31日に迎えるブレグジット移行期間の終了をもって、英国はEUの単一市場と関税同盟を離れる。今回合意に至ったそれ以降の貿易協定について、約2000ページに及ぶ文書はまだ公表されていないが、漁業権や公正な競争条件など、現時点で分かっていることを以下にまとめた。

■関税

 英国およびEUは、双方で生産された物品が両地域間を移動する際に、関税や数量割り当てを課さない。

 英政府は関税ゼロを協定の主なプラス面として歓迎している。だがこれは、EU加盟国として英国が享受してきた利益の一部を維持する効果があるにすぎない。

■漁業権

 英国側は自国海域における完全な支配権の復活を要求してきた。一方、EU沿岸各国は、英海域でのEU漁船の操業継続が保証されるよう求めていた。

 両者は激しい議論の末、妥協案に達し、5年半の移行期間を設け、EU側はその間、英海域での現在の漁獲割当量の25%を英国に段階的に返還する。それ以降は、英海域におけるEU漁船の漁獲割当量について毎年交渉を行い、EU側が不当とみなす場合は英国に対し経済制裁を科すことができる。

■公正な競争条件

 もう一つ大きな障害となっていたのは、いわゆる「公正な競争条件」をめぐるルールだ。これは英政府が今後、規制基準を緩和したり、産業に政府補助金を出したりすることで、英企業がEU企業よりも有利になることを警戒するEU側が主張していた。

 英国側は、環境や労働法規、政府補助金に関するEU規制に従うことを強制される制度の導入を、必死に回避しようとしていた。

 だが協定は双方にとって、自らが仲裁対象となる損害を被っていると考える場合、対抗措置を可能とするものになったと英政府も認めている。

■税関

 英国は今月31日にEUの単一市場と関税同盟から離脱する。すなわち英仏海峡を横断する輸出入品は、通関手続きの復活と直面する。

■安全保障

 EUは同協定について「刑事・民事の法的案件において、法執行と司法協力の新たな枠組みを確立する」ものだと述べている。

 英政府は同協定によって、英EU双方は引き続きDNAや指紋のデータ、乗客データなどの共有および欧州警察機関(ユーロポール、Europol)を介した協力を行うことになると述べている。

■「大きな変化」

 協定の合意には至ったものの、1月1日以降、欧州の人々や企業にとって「大きな変化」が訪れると英EU双方が警告している。英国およびEU加盟諸国の国民は、両地域間で居住し就業するための自由な移動を享受できなくなる。

 EUは「英EU間の人、物、サービス、資本の自由な移動は終わりを迎える」と宣言した。「EUと英国は2つの個別の市場、2つの異なる法規空間を形成する。これによって物品とサービスの貿易、また国境を越える移動と交流に対し、現在は存在しない障壁が双方向に生じる」 (c)AFP