【12月28日 東方新報】「嫦娥5号(Chang'e-5)のミッション成功は、将来の有人月面着陸に必要な技術の基礎を築いた」――月の土を採取した中国の人工衛星・嫦娥5号が帰還した17日、中国国家宇宙局副局長で月探査プロジェクト副責任者の呉艶華(Wu Yanhua)氏は誇らしげに語った。米国、旧ソ連に続いて44年ぶりとなる月からの「サンプルリターン」成功に続き、中国は宇宙ステーションの建設や「月の水」のサンプルリターンを計画しており、近い将来の有人月面着陸も現実味を帯びてきた。

【編集部おすすめ】月の試料1731グラム 中国の月探査機「嫦娥5号」

 呉氏は「まずは地球軌道上に宇宙ステーションを建設し、有人宇宙飛行士が長期滞在を体験して課題を研究する。有人月面着陸計画はその後になる」と説明。中国は2022年に宇宙ステーション「天宮(Tiangong)」の運用を始める計画だ。2021年と2022年にコアモジュール、実験モジュール、有人宇宙船、無人補給船など計11回の打ち上げを行い、宇宙飛行士の乗り換えと貨物補給をしながら「天宮」の組み立て・建設を行う。従来は空軍パイロットに限っていた宇宙飛行士に、新たに科学者やエンジニアを採用。宇宙ステーションの構築や運用に求められるニーズに対応していく。

 また、国家宇宙局の徐宏良(Xu Hongliang)報道官は「今後、嫦娥7号(Chang'e-7)が月の南極を探査する」と説明。嫦娥7号は2023年に打ち上げられる見込みで、2024年には嫦娥6号(Chang'e-6)が月の南極からのサンプルリターンを行うといわれている。月の南極には水が氷の状態で存在するとみられている。将来的には、水に含まれる水素をロケット燃料にしたり、月に滞在する宇宙飛行士の飲料にしたりできる可能性がある。

 中国は今年7月に火星探査機「天問1号(Tianwen-1)」の打ち上げにも成功している。呉氏は「天問1号は順調に飛行を続けており、2021年2月には火星の周回を開始し、5月に火星に着陸して探査を行う」と説明した。さらに構想の段階として、火星や小惑星の土壌サンプルを持ち帰るサンプルリターン計画や、木星探査の計画を進めていることも表明した。

 宇宙プロジェクトがめじろ押しの中、中国は各国との協調姿勢もアピールしている。宇宙ステーション「天宮」は、日本など各国の実験を受け入れると表明している。日本の実験棟「きぼう(Kibo)」を含めた国際宇宙ステーション(ISS)は、2024年以降は国による運用を終える見込み。「天宮」が今後、世界各国の宇宙研究の拠点となる可能性がある。中国は各種の宇宙関連プロジェクトでフランスやイタリア、ロシアと協力している。

 中国はロケットの打ち上げ回数が2018年に世界1位となり、測位衛星の数は50機以上で米国を上回っている。現在の宇宙産業は中国なしでは考えられない時代となりつつあり、中国は各国との協調姿勢を重視している。(c)東方新報/AFPBB News