【12月24日 東方新報】上海市の上海開放大学(Shanghai Open University)に来春から「家政学部」が誕生する。日本では家政学部は珍しくないが、中国では極めて珍しい。家事全般はもとより栄養管理や介護、幼児教育などもこなす「ハイレベル家政婦」の育成と、家事サービス業の管理職育成を目指している。

 毛沢東氏(Mao Zedong)が「女性は天の半分を支えている」と提唱したように、中国では建国後から女性解放が進み、職場の第一線で男女が同じように働いてきた。共働きが常識となる中、料理や洗濯、掃除、子守などの家事は主に地方からの出稼ぎ女性が担った。家政婦は「おばさん」という意味の「阿姨(Ayi)」と呼ばれ、親しみある頼もしい存在であると同時に、社会的には一段低い職業と見られてきた。家政婦の派遣会社も管理職のうち大学卒業者は一部にとどまっている。

 しかし中国社会が急激に発展してきた近年、キッチンや洗濯機、掃除機などにもIT化の波が押し寄せ、買い物や配送サービスも現金を使わないキャッシュレス化が当たり前となった。社会の高齢化に伴い介護ニーズも高まり、子どもの世話もただの子守でなく、子どもに教養を積ませるスキルが求められている。「体力勝負の世話好きの阿姨さん」の時代から、社会の発展に合わせて家政婦のハイレベル化が必要になってきている。

 上海開放大学は社会人向けの生涯学習や技能学習を担っており、その一環として2014年に家政学科を設立。受講生は市内に17校ある分校に通ったりリモート授業で学んだりして、これまでに約1400人が修了している。上海市では家事サービス業の年間市場規模は300億元(約4770億円)に上り、5年後には600億元(約9540億円)を超えると予想される。家政婦のプロ人材が最大20万人不足すると試算されており、同大学は家政学科を母体に家政学部を設立することにした。初年度は50人の学生が入学する。先端機器を使った調理室や実習室を備えており、現在の家政学科責任者の盧琦(Lu Qi)氏は「学生には料理や生け花といった実技から経営管理まで学んでもらう。家事サービス業は広大な将来性がある」と話している。

 一般より低かった家政婦の賃金も最近は上昇し、平均的サラリーマンより収入が多いハイスキル家政婦も珍しくなくなった。家事サービス会社の管理職のニーズも高く、家事サービスは「稼げる職業」となっている。「全国家事コンクール」家庭料理部門で優秀賞を受賞したことがあり、家政学部に通う学生の一人、宋龍美(Song Longmei)さんは「大学での勉強や実習を通じてプロの家政婦として専門性と技術を高め、いずれは経営者になりたい」と夢を膨らませている。(c)東方新報/AFPBB News