【12月16日 AFP】オーストラリア政府は16日、中国との対立が激化する中、同国産の大麦に中国が懲罰的関税を課しているとして、世界貿易機関(WTO)に提訴する方針を発表した。

 オーストラリアのサイモン・バーミンガム(Simon Birmingham)貿易・観光・投資相は、オーストラリア産の大麦に対する中国の80%の追加関税は「根拠がなく」、それを裏付ける事実も証拠もないと非難。他の分野でもWTOに提訴する可能性を示唆した。

 両国の関係は1989年の天安門(Tiananmen)事件以来、最悪の状態で、中国政府はオーストラリア製品に次々と経済制裁を科している。

 バーミンガム氏は、「わが国はこれまでにまとめた証拠、データ、分析に基づく揺るぎない論拠があると自負している」と述べた。

 オーストラリアは近年の干ばつの前には、主にビールの原料として、年間約10億ドル(約1000億円)相当の大麦を中国へ輸出していた。

 専門家によると、中国は大麦の自給率が約20%にすぎないことから、輸入への過度の依存を懸念。2018年からオーストラリア産大麦の輸入制限を検討してきた。

 しかし、今回の関税の背景には両国間の激しい対立があり、政治的な動機に基づく措置ではないかと懸念されている。

 それぞれの制裁の理由は技術的な問題だとされているが、オーストラリア政府は自国およびアジア太平洋地域での中国の影響力を押し返していることへの報復だとみている。オーストラリアの少なくとも13の業界が関税などの何らかの形で妨害を受けており、それには大麦や牛肉、綿花、ロブスター、砂糖、木材、銅、ワイン、小麦、羊毛といった品目だけでなく、観光、大学教育も含まれている。

 オーストラリアはこれまで、紛争の解決に何年もかかったり、報復で提訴されたり、外交関係がさらに悪化したりすることを恐れて、WTOによる紛争解決を避けていた。(c)AFP