「二人っ子政策」導入も減少続く中国の出生人口 その理由は?
このニュースをシェア

【12月18日 東方新報】中国は長年続けてきた人口抑制策「一人っ子政策」を緩和し、2016年から全面的な「二人っ子政策」を開始した。しかし出生人口は2017年から3年続けて減少。日本では「二人っ子政策に効果なし」とたびたび報道されているが、ことはそう単純な話ではない。
中国では1960~70年代に人口が急増し、1979年から一人っ子政策が導入された。農村部や少数民族、両親がともに一人っ子の場合などは第二子出産も許されたが、中国各地で「計画成育を徹底しよう!」という標語が横断幕や壁に書かれ、一人っ子政策が徹底された。
2013年には夫婦のどちらかが一人っ子であれば第二子出産もOKと条件が緩和され、そして2015年に「来年からすべての夫婦に二人までの出産を認める」と公表された。
その結果、2013~15年は1600万人台だった出生数が2016年は1786万人に増加。二人っ子政策の成果が早速現れたとして、担当省庁は「2017年には2000万人を超える」と強気の見込みを立てた。ところが2017年は1723万人と再び減少し、18年は1523万人、19年は1465万人と急減。1961年以来の最低水準となった。
それでも実は、二人っ子政策は大きな成果をもたらしている。2015年まで新生児のうち第二子が占める割合は30%台だったが、2016年に40%台となり、2019年には57%に達した。つまり、今の中国では初産を迎える夫婦より、第二子を産む夫婦の方が多いのだ。二人っ子政策を導入したことで、出生人口がもっと激減するところにブレーキをかけたといえる。
出生人口が増えない最大の理由は、出産適齢期の女性が急激に減っていることだ。2010年の国勢調査によると、出産旺盛期の22~31歳の女性は2015年の1億1400万人から2025年には7100万人と4割近く減少すると推計しており、現在はまさにそのさなかにある。長年続けてきた一人っ子政策の副作用といえる。これに、若い男女ともに高学歴化や価値観の変化による晩婚化・非婚化が進んだことが拍車を掛ける。
さらに出生人口が増えない外的要因として、不動産の高騰と膨大な教育費が大きい。北京や上海などの大都市では不動産価格は先進国並みになっており、マイホームの購入は年々厳しくなっている。子どもの受験競争は過酷で、小学生から家庭教師をつけ、大学に入れば良い就職先を得るため海外留学するのも当たり前。このため、親は収入の大半を子どもの教育費につぎ込んでいる。この状況では「結婚できない」「結婚しても子どもはつくれない」「1人目は産めても2人目は無理」という人々が多いのも当然といえる。
2019年、出生数を総人口で割った中国の「普通出生率」は1.048%に落ち込み、1949年の建国以来、最も低かった。税収をもたらす働き盛りが多く、社会保障が必要な高齢者が少ない「人口ボーナス」が中国の経済成長を支えてきたが、これからは深刻な少子高齢化に直面し、社会保障が財政上の大きな負担となる。中国の一部の省では公的年金の積立金が底をつき始めている。いずれ出産人数の制限自体が撤廃されるとも言われるが、出生人口をV字回復させる特効薬を見つけるのは困難なのが現状だ。(c)東方新報/AFPBB News