【12月10日 AFP】スリランカは9日、新型コロナウイルスに感染して死亡したイスラム教徒19人の遺体について、遺族の反対を押し切って火葬すると発表した。同国では新型ウイルスで死亡したイスラム教徒の火葬をめぐって論争が起きていた。

 スリランカでは今年10月から新型ウイルスの感染者数が8倍以上に急増しており、累計感染者数は2万9300人余り、死者は142人に上る。

 新型ウイルスによる死者の遺体は、遺族に引き取られた後、保健当局の厳しい監視下で火葬されることになっている。

 しかし、シャリア(イスラム法)が火葬を禁じていることから、新型ウイルスに感染して死亡したイスラム教徒19人の遺族は、主要都市コロンボ(Colombo)にある遺体安置所からの遺体の引き取りを拒否した。

 これを受けて、ダプラ・デ・リベラ(Dappula de Livera)司法長官の報道官は、「遺族が引き取らなかった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の犠牲者の遺体は、隔離規則の観点から言えば、火葬することができる」と述べ、19人の遺体を今週火葬すると明らかにした。

 警察によると、5人の遺体は9日に火葬された。

 イスラム教徒らはこのやり方に異議を申し立てており、市民社会団体と共同で最高裁に嘆願書12通を提出したが、最高裁は先週、理由を示すことなく嘆願を退けた。

 スリランカ・ムスリム会議(SLMC)は、新型ウイルスによる犠牲者の大半はイスラム教徒だと述べている。SLMCの広報によると、イスラム教徒らは火葬されたくがないために、新型ウイルス検査で陽性反応を示しても、病院で治療を受けたがらないという。

 影響力のある仏教僧らが土葬は地下水の汚染と新型ウイルスの感染拡大につながりかねないとの懸念を広める中、スリランカは4月、新型ウイルスによる死者の遺体について、火葬を義務付けていた。

 世界保健機関(WHO)は、土葬と火葬の両方を認めている。(c)AFP