【12月19日 AFP】文軍紅(Wen Junhong)さん(68)は20年前、中国南西部の重慶(Chongqing)の路上で1匹の捨て犬を拾った。現在は自宅で1300匹以上の犬と一緒に暮らしているが、その数は増え続けている。

 最初の犬、中国語で「優しくて物静か」を意味する名前を付けたペキニーズ種の「ウェンジン」を連れてきてから、気が付くとやめられなくなっていた。路上で事故にあったり、食用とされてしまったりするのではないかという心配に突き動かされてきたのだと言う。

 家の前庭にたびたび置き去りにされる見捨てられたペットや野良犬に加え、さらに多くの犬を救ってほしいと毎日電話があると、文さんは話す。

 文さんが深い愛情を持ってかわいがっているのは犬だけではない。猫100匹と馬4頭、少数のウサギと鳥とも一緒に暮らしている。

「私のことを正気じゃないと言う人もいます」と、文さんは認めている。

■犬小屋掃除

 文さんの一日は朝4時から始まる。まず取り掛かるのは、夜間に犬たちがしたバケツ20~30杯分のふんの片付けと、動物たちの餌として合計500キロ以上の米、肉、野菜の調理という骨の折れる仕事だ。

 近隣住民からの苦情により、文さんと動物たちが引っ越しを重ねることを余儀なくされた末、たどり着いたのが、塀と施錠した門扉に囲まれた、丘の中腹にあるこの家だ。

 文さんは所有していたマンションの売却益、6万元(約95万円)に上る借入金、過去に環境技術者として働いていたことによる年金と老後の蓄えをすべて運営資金に充てている。

 また、ソーシャルメディアで「重慶の文おばさん」というニックネームで呼ばれるようになり、関心の高まりとともに寄付金が集まっている。

 文さんは、この関心の高まりが引き取りにもつながればと期待しているが、新たに連れて来られる犬の数は、引き取られる数をはるかにしのいでいる。AFPが取材に訪れた日には、子犬4匹を含む6匹が迎え入れられていた。

 文さんは現在、6人のスタッフを抱えている。そのうちの一人は、「負担が大きすぎて、文さんだけでは対処できません」と話す。

 文さんは、動物への愛情と自身を支援するチームの両方があっても、捨て犬に新しい飼い主を見つけるのは大変なことだと語る。

「本当にとても難しいのです」と、文さんは嘆く。「犬がますます増えて、1匹当たりのスペースがさらに狭くなっています」(c)AFP/Helen Roxburgh and Qian Ye