【12月9日 AFP】(更新)8日に行われたサッカー欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League 2020-21)のパリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)対イスタンブール・バシャクシェヒル(Istanbul Basaksehir)の試合で、審判の差別的な発言に怒った両チームの選手がプレー続行を拒否し、序盤で試合が中止になる欧州最高峰の舞台では前代未聞の出来事が起こった。

 事件が起こったのは両チーム0-0の14分ごろで、バシャクシェヒルのアシスタントコーチを務める元カメルーン代表のピエール・ウェボ(Pierre Webo)氏が第4審判のセバスチャン・コルテスク(Sebastian Coltescu)氏に激しく詰め寄り、退場を宣告された。

 原因はコルテスク氏が差別的な言葉を使ったこととみられ、ウェボ氏が問い詰める様子はテレビのマイクで拾われていたが、問題の審判の発言は、AFPの記者が翻訳したところによると「あそこの黒人です。こんなことあり得ません。あちらへ行って特定してください。あの男、あの黒人です」というものだった。

 欧州サッカー連盟(UEFA)はその後に「徹底調査」を約束し、9日の午後6時55分(日本時間10日午前2時55分)に、中止された時点から試合が再開されることを正式に発表した。また、「例外的な措置として、試合の残りは別の審判団のもとで行うことを決めた」とも話している。

 新しい審判団には、オランダのダニー・マッケリー(Danny Makkelie)主審らオランダとポーランドのセットが指名された。もともとはオビディウ・ハツェガン(Ovidiu Hategan)主審を中心に、差別発言があったとされる第4審判コルテスク氏を含めた全員がルーマニアの審判団だった。

 バシャクシェヒルのベンチメンバーに入っていた元セネガル代表のデンバ・バ(Demba Ba)が、問題の審判に対して「相手が白人選手なら、あんたは『この白人』なんて言い方はせず、普通に『この選手』と言うだろう。それならなんで、黒人選手のときだけ『この黒人』なんて呼ぶんだ?」と問い詰める声も拾われていた。

 この出来事の約10分後、選手はピッチを去り、最終的に試合の中止が決まった。バシャクシェヒェルはツイッター(Twitter)に、選手が「ピッチに戻らないこと」を決めたと投稿した。

 バシャクシェヒェルのオーナーと親しいとされるトルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領も、事件に反応し、ツイッター(Twitter)で「バシャクシェヒェルのスタッフであるピエール・ウェボに対する人種差別発言を強く非難し、欧州サッカー連盟(UEFA)が必要な措置を取ると確信している」とコメントした。

 グループのもう1試合でRBライプツィヒ(RB Leipzig)がマンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)に勝利したため、PSGのグループ突破が決まっている。(c)AFP