【12月3日 東方新報】11月半ばに立て続けにオンライン方式で行われた多国間の首脳会議で、中国の習近平(Xi Jinping)国家主席が「中国は世界経済の一体化を推進する」と積極的に発言を繰り返した。貿易摩擦や新型コロナウイルスの対応を巡り中国と長らく対立していた米トランプ政権がレームダック化しつつある中、次期バイデン政権誕生までの移行期に中国の国際的影響力を高めようとしている。

 11月10日、中国やロシアを中心とした上海協力機構(SCO)首脳会議で、習氏は「中国の発展は世界と切り離せず、世界の繁栄も中国を必要としている。各国が中国の発展による新しいチャンスをつかみ、対中協力を積極的に深めることを歓迎する」と強調。トランプ政権が進めてきた米中経済のデカップリング(切り離し)は現実的ではないと指摘した。17日にはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5か国(BRICS)首脳会議で、トランプ政権の名指しを避けつつ、「一国主義への反対」を表明した。

 19日からのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でも習氏は「地域経済の一体化を推進し、アジア太平洋の自由貿易圏を一日も早く作り上げなければいけない」と強調。日中韓や東南アジア諸国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の妥結という成果を誇った上、環太平洋連携協定(TPP)への参加も「積極的に考えている」と初めて表明し、世界を驚かせた。21日からの主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)では「新型コロナウイルスワクチンの研究開発や生産、分配などについて各国との協力を強化したい」とし、各国が直面しているコロナ禍で国際協調の姿勢をアピールした。

 サミット月間で、「われわれは経済のデカップリングや排他的な小さい集団を形成して歴史的トレンドに逆行することはない」と繰り返した習氏。ただ、TPP加盟には、中国の国有企業の改革や工業製品の関税ゼロ、非関税障壁の撤廃などが求められるため、実際に早期の参加は難しい。それでも踏み込んだ発言をした狙いは何か。

 次期バイデン政権は、気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」への復帰や世界保健機関(WHO)脱退手続きの停止を表明しているが、貿易問題や香港問題、南シナ海の安全保障などでは対中強硬姿勢を取るとみられる。米国第一主義で世界を翻弄(ほんろう)してきたトランプ政権は、相対的に中国の国際的威信を高める側面もあった。

 しかしバイデン政権が国際協調路線を取りながら「中国包囲網」を構成することは中国政府にとって避けたい状況だ。米国政権が「空白」期にある中、トランプ政権が離脱したTPPへの加盟意欲というリップサービスまでして貿易自由化を進める姿勢をアピールし、さらに各国が直面しているコロナ禍でも中国が国際貢献する立場を見せることで、いずれ来る「新たな米中対立」に備えていく狙いがあるとみられる。(c)東方新報/AFPBB News