【12月3日 AFP】張樹鵬(Zhang Shupeng)さん(34)は、中国中部の国立公園の山々を落ち着いた様子で見まわし、そして絶壁からジャンプした──真っ逆さまに落下するそのスピードは時速230キロだ。

 これは、翼の付いたスーツを着用し、飛行機やヘリコプター、もしくは山から飛び降りて高速で滑空するという、世界で最も過激なスポーツの一つ「ウイングスーツフライング」だ。ウイングスーツを着用することで「人の飛行」が可能になる。

 湖南(Hunan)省張家界(Zhangjiajie)にある雄大な天門山(Tianmen Mountain)からのジャンプを控えた張さんは、「山の上に到着すると興奮します。でも、飛行中はとても穏やかです」とAFPに笑顔で語った。

 ウイングスーツを着用して高所から飛び降りると、空気抵抗を受けて揚力が発生し、より水平な滑空が可能となる。

 これまでにウイングスーツを使った飛行を3000回以上経験している張さんは、「鳥になった気分だ」と話す。張さんは、パラグライダーの元世界王者でもある。

「(スーツは)体の一部になる。姿勢を変えることで向きを変えたり、スピードを上げたり下げたりできる」

 2011年、米国のジェブ・コーリス(Jeb Corliss)さんが、地元メディアの前で天門山にある高さ130メートルの岩のアーチ「天門洞」をくぐり抜けた。中国で初めて披露されたウイングスーツフライングだった。

 その翌年、天門山で第一回の世界大会が開催された。これをきっかけに張さんはこのスポーツにのめり込み、中国を離れて欧米でのトレーニングを重ね、2017年には世界を代表する選手の一人となった。(c)AFP/Ludovic EHRET