【11月29日 AFP】フランス・パリ市内で28日、新たな治安法案に対する数万人規模の抗議デモが行われた。黒人男性を集団暴行した警官の人種差別的な行為の衝撃でフランスの緊張が高まる中、デモ参加者と治安部隊の衝突も発生した。

 エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は27日遅く、黒人音楽プロデューサーのミシェル・ゼクレー(Michel Zecler)さんが21日夜にパリ市内で複数の警官に暴行を受ける様子を撮影した動画を「われわれの恥」だと批判した。この暴行事件で、人種差別が警察組織内に浸透しているという不安が増大した。

 抗議デモの参加者らは、警官の顔を公開することを規制する治安法案24条への怒りをあらわにした。法案は勤務中の警官の画像を「本人の心身」を傷つける目的で拡散することを禁止する内容。国民議会(National Assembly、下院)で先日可決され、今後は上院での採決が予定されている。

 暴行事件を撮影した動画は、オンラインニュースサイト「ループサイダー(Loopsider)」で最初に公開された。事件に関与した警官4人の捜査が行われているが、法案の24条が成立していたら動画がまったく公開されていなかった可能性もあると指摘されている。

 内務省によると、この日の抗議デモにはパリ市内で約4万6000人、フランス全国で約13万3000人が参加した。デモ主催者は参加者数を、パリの20万人を含めて全国で約50万人と発表した。

 ジェラルド・ダルマナン(Gerald Darmanin)内相は、全国で治安部隊に37人の負傷者が出たことを明らかにして、警察への「容認できない」暴力を非難した。(c)AFP/Daphne ROUSSEAU / Alice LEFEBVRE