【12月5日 AFP】スウェーデンでは2009~2010年に新型インフルエンザ(A/H1N1)が流行した際、ワクチンの大規模な集団接種を行った結果、衰弱を引き起こすナルコレプシー(過眠症)にかかった若者が何百人もいる。そのうちの一人、メイサ・シェビ(Meissa Chebbi)さん(21)は、急いで開発されたワクチンの接種はもう絶対に受けないと断言する。

 この経験は、今後登場するだろう新型コロナウイルスワクチンへのスウェーデン人の信頼を揺るがし、あるかもしれない長期的副作用についての懸念を深めている。

 急速に開発されるワクチンについて、シェビさんはAFPの取材に「絶対に勧めません」と語った。「命に関わるような状況で、どうしても必要というのでなければ」

 スウェーデンの例は、新型コロナウイルスワクチンの接種に際して各国政府が直面する複雑な課題を浮き彫りにしている。とりわけソーシャルメディア上を偽情報が飛び交い、国家機関やさらにはウイルスの存在そのものに対する懐疑論を増幅している昨今の状況下ではなおさらだ。

 ワクチンをめぐるトラウマはとりわけスウェーデンでは顕著だ。同国では通常の子どもの予防接種率は90%以上を誇っている。だが世論調査機関「ノーブス(Novus)」が実施した最近の調査によると、スウェーデン人の26%が開発中の新型コロナウイルスワクチンを接種する予定はないと答え、28%がまだ決めていないと回答。ワクチンを接種すると答えたのは46%だった。

 接種に反対する人のうち87%は、未知の副作用が怖いからというのが理由だった。

 2009年の新型インフルエンザ流行時、スウェーデンの保健当局は英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline)が製造したワクチン「パンデムリックス(Pandemrix)」を接種するよう促し、国民の60%以上がその呼び掛けに従った。世界でも最高水準の接種率だった。

 だが子どもや30歳未満の若者を中心に数百人が、そのワクチンの副作用として後にナルコレプシーの診断を受け、最終的にはこのワクチンに含まれた免疫補助剤との関連性が確認された。ナルコレプシーは神経系の慢性障害で、しばしば自分では制御できないほどの過度の眠気を引き起こす。

「睡眠発作が四六時中、あらゆる状況で、しかも不適切なときに起きるのです……食事中、仕事の面接中、大学の講義やゼミのときもです。職場でも、バスの中でも、どこでも構わず眠ってしまうのです」とシェビさん。「私の人生は壊れてしまいました」

 スウェーデン医薬品保険では、パンデムリックスに関連するナルコレプシー702件の申請のうち、これまでに440件が承認され、総額1億クローナ(約12億4000万円)の補償金が支払われている。

 どのようなワクチンにも副作用はあるが、スウェーデンの新型インフルワクチンで起きたナルコレプシーのように重度のものは、相対的には非常にまれだ。またさまざまなワクチンの効果も広く受け入れられており、多くの疾病の根絶にもつながっている。